重要な欠陥の開示と内部統制監査報告書

2009年6月20日 | By 縄田 直治 | Filed in: 内部統制報告書.

2009年6月19日に、「重要な欠陥」と「意見不表明」の監査報告書がそれぞれ公表された。このうち重要な欠陥が開示されたのは、株式会社ビジネスブレイン太田昭和(E04869)の2009年3月31日現在の内部統制報告書だ。

---以下EDINETより引用---

3【評価結果に関する事項】
 下記に記載した財務報告に係る内部統制の不備は、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高く、重要な欠陥に該当すると判断した。したがって、当事業年度末日時点において、当社の財務報告に係る内部統制は有効でないと判断した。

 記

 当社は決算・財務報告プロセスでの子会社の繰延税金資産において、取崩しの検討、及び、認識が不十分であったため、当期の繰延税金資産について修正を行うことになった。

 事業年度の末日までに是正されなかった理由は、繰延税金資産の回収可能性の判断の適用を誤り、さらに、それに対する牽制が充分に機能しなかったためである。

 以 上
4【付記事項】
 評価結果に関する事項に記載された重要な欠陥を是正するために、事業年度の末日後、繰延税金資産の回収可能性の判断に関するマニュアル、新たな業務フローを整備及び運用し、内部統制報告書提出日までに当該是正後の内部統制の整備及び運用状況の評価を行った。評価の結果、内部統制報告書提出日において、繰延税金資産の回収可能性の判断に係る内部統制は有効であると判断した。
---引用おわり---

これに対する会計監査人の監査報告書は、次のような意見および追記情報となっている。
---以下EDINETより引用---

当監査法人は、株式会社ビジネスブレイン太田昭和が平成21年3月31日現在の財務報告に係る内部統制は重要な欠陥があるため有効でないと表示した上記の内部統制報告書が、我が国において一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠して、財務報告に係る内部統制の評価について、すべての重要な点において適正に表示しているものと認める。
 
 追記情報
 内部統制報告書に記載されている繰延税金資産の回収可能性の判断の適用を誤ったことにより、重要な欠陥として指摘した事実については、会社による検討が行われ、その結果の修正は連結財務諸表に反映されており、これによる財務諸表監査への影響はない。

---引用終わり---
さて、繰延税金資産の評価に関して重要な欠陥があることをもって経営者が会社の内部統制が有効でないと判断した形になっており、これに、会計監査人が同意して監査意見としては「適正」となっている。
但し、次のような問題点があるだろう。

(1)単に繰延税金資産の評価の問題に重要な欠陥が限られているのであれば、内部統制はその点を除いては有効であったはずなのではないか。つまり、実施基準では重要な欠陥があることが内部統制が有効であるかないかの判断基準となっているが、経営者の考えとしては、「除外事項付有効」ということにならないのか。
(2) 会計監査人による「追記情報」は本来は意見を述べる箇所ではない。しかし、「その結果の修正は連結財務諸表に反映されており、これによる財務諸表監査への影響はない」とする判断を表明しており、連結財務諸表全体としてではなく、さらに踏み込んで個別の勘定科目に関する見解を結果的には表明しているようにも読める。修正が連結財務諸表に反映されているかどうかは経営者のアサーションの一部であり、監査人の立場で触れるべきことではなく、単に連結財務諸表監査の中で必要性があればそれを記載すればよいだけなのではないか。

これらは、実施基準が拙速に導入されたことから生じているとも考えられる。もう一度、原点からきちんと整理する必要があるように思える。

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