インフレ税

2022年8月21日 | By 縄田 直治 | Filed in: 税と財政.

今日の記事にインフレ税という言葉を見つけました。

その意味するところは次のようです。

  1. インフレが発生すると名目的な貨幣価値に対して実質的な貨幣価値が下がる
  2. 政府の債務(国債など)の返済負担が、名目上は変わらなくても実質上は低くなる
  3. 国民の持っている資産(国債など)の価値が下がる
  4. それだけ、価値が民間から政府へ移転するので、あたかも徴税しているかのように見える

日本政府の発行する国債残高の対GDP比率は2.6倍と、先進国中見ても群を抜いています(財務省資料、https://www.mof.go.jp/zaisei/current-situation/situation-comparison.html)。二位のイタリアでも1.5倍程度という数字をみれば、国の借金についてどう対応するかを議論しなければならないのは明らかです。選挙では問題になりませんし、政策論争にもならないところを見ると、日本が自滅に向かうように何か罠が仕組まれているのではないかとさえ思えます。

そこでインフレ税という考えが出てきたとすれば更に危険です。貨幣価値の下落は円安を招き、輸入物価を上昇させ、国民の労働力や購買力を下げてしまうため、国民生活にはマイナスの影響が大きいです。もちろん輸出企業にとってはプラスの面がありますが、日本の貿易収支はもはや赤字気調ですので、総体でみればマイナスでしょう。

結果的に税収が減り国の財政力も衰えることになります。インフレは貨幣価値下落の調整として金利の上昇も招くので投資が一気に冷え込みます。

この歪みは、日本銀行の貸借対照表に現れます。大雑把に言えば、日銀の貸借対照表は、資産に国債、負債に貨幣発行額(市中銀行からの当座預金)で構成されています。金利が上がれば国債価額は下がりますので、日銀のバランスは瞬間的には債務のほうが多くなります。市場の値下がりした国債を買っても、マネーサプライが増えるので、これが更にインフレを生みます。

日本は大東亜戦争で国富の3分の2を失い、ハイパーインフレ状態に陥り戦費調達のために政府が発行した国債も紙くずになりました。しかし戦争に向けていた国民のエネルギーを経済復興に向け、また外地から戻ってきた人たちも生産力となり、一時的な食糧危機はあったものの劇的な復興を遂げました。その経験を踏まえれば、理由は何であれ国家財政が借金まみれになるということがどういうことか、そして奇跡的復興をもたらす生産力は少子高齢化人口減少でまったく期待できないとすれば、戦争をしなくても既に負けた状態になっているとも言えます。

経済は常に国民の持っている生産力を基軸に考え、相場はそれに応じて調整弁として動いていると考えるようにすれば、大きく間違うことはないでしょう。

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