財務会計士お流れ

2011年4月23日 | By 縄田 直治 | Filed in: 監査と監査人.

会計士試験合格者の就職浪人問題への対策として提案されていた「財務会計士」の創設がどうやらお流れになったらしい。
もともとこの制度は唐突に提唱され、議論も「創設アリキ」で進められた感があるので、結果的に廃案になっても議論が元の白紙に戻っただけとも言える。

就職浪人問題とは、いわゆる内部統制監査制度ができるときに企業側も監査法人側も会計士が不足するということで合格者を政策的に急増させたのだが、結果的に企業側が採用を想定ほどしなかったために、未就職者が溢れてしまったことが発端である。

合格者の急増は監査法人側にとっても採用圧力という形で現れたため余剰人員を抱えることになってしまっただけでなく、いわゆる新たな団塊の世代を生み出してしまい人員構成を相当歪めている。しかも研修制度がいくらあっても現場で育成するという文化の中では育成に対応できる人も限られてくるので、必然的に未成熟なままの若手会計士が増えてしまい、監査品質への負の影響が懸念される。

エンロン事件以降の一連の制度改訂により、監査法人は独立性の問題からシステム開発などの仕事を始め監査業務以外の業務がかなり事実上制限されている状態になっており、監査法人で色々な業務を経験するのは難しくなっている。だから本当は企業に就職して実務を色々と覚えてから監査法人に転職するほうが、長い目で見れば深みのある会計士になれるはずだ。ただその道を難しくし、また就職浪人を生み出している遠因となっているのが、新入社員の給与水準の違いである。監査法人に入れば有資格者として扱われ、企業に入れば単なる新入社員でしかない。

就職浪人問題は実は企業側と監査法人側との人材交流が硬直的なところに本当の意味での問題がある。両者の人材交流がもっと普通に行えるようになれば、財務会計士など創設しなくても、公認会計士が一つの職能集団として企業の経理財務部門と監査法人との行き来するようになるはずだ。

そのためにも企業側も監査法人側も、人材流動化を前提とした人事給与制度を導入しなければならない。つまり公認会計士制度自体は法律だけでなく民間のコンセンサスとともに成り立っている制度であるということを前提に、日本に必要な会計・財務の人材育成を実現するプランとして議論されなければならないのであって、資格の議論ではないのだ。

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