財務情報の信頼性は決算適正証明だけでよいのか

2007年5月20日 | By 縄田 直治 | Filed in: 監査と監査人.

財務データがXBRLなどによって「自動的」に利用されるようになると、データに対する市場の反応速度が速まるため、誤った情報などが流されると市場の取引がバースト(いわゆるストップ安や価格乱高下など)を起こす可能性もある。他方で、財務情報が「適正でない」といった情報は、どの範囲までが適正なのか適正でないのかといった情報が一緒に提供されなければ、一気に過去の情報全体が信頼されないという事態を招く可能性もある。
だから上場株式は情報が市場に提供される前に取引停止などの扱いを取らないと市場がパニックに入るかもしれない。それは最近の会計不正事例を見れば、予想がつく事態である。

それを回避するためには、最終決算の適時開示よりも、段階的にこまめな開示をすることによる市場に対して予測可能性を付与することのほうが重要と思われる。例えば毎月の売上高や受注高を開示することは、期間損益の予測が可能であるため、決算情報が市場にとって「驚愕」になる可能性は低い。つまり、決算の情報の信頼性は、過去の毎月の開示情報が正しかったという確認行為に過ぎず、財務情報が信頼されるということは結局は会社や経営者に対する信頼を基礎として(つまり、提供される情報は監査されなくてもそれなりに信頼できるという前提の下に)世の中は動いている。

監査の基礎も、「全体としての財務諸表が適正か否か」といった玉虫色な意見よりも、むしろ「限定的にこういった手続を採った結果、X月の売上高が誤っていると考えられるような事態は見当たらなかった」という認証情報がたくさんあるほうが、結果的に信頼性を増すようにも思える。また、監査証明業務は公認会計士法で決められた者しかできないことになっているが、認証業務であれば一定のレベルの認証機関であれば誰でもできることになるから、そういった制度と組み合わせることも手段として考える必要があるのではなかろうか。
今の世の中は何となく逆に動いている気がしないでもないけれども・・・・。

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