XBRLと開示

2007年5月20日 | By 縄田 直治 | Filed in: 会計とIT.

XBRL(eXtensible Business Reporting Language)とは主に財務情報を統一的な規格で扱うための言語仕様である。東京証券取引所のEDINETという企業情報電子開示システムのプラットフォームなどで使われている。

従来の財務情報は紙の上に記述されていた。それがインタネットの普及によって企業のWebサイトなどで情報が入手できるようになったものの、依然としてPDFファイルでの提供であって、情報のベースが会計データではなく文字データであるところから、利用者は「再入力」を余儀なくされているのが実情である。仮に財務データがスプレッドシートなどで提供されたとしても、各社バラバラの作り方では意味半減である。

もともと、企業情報の中でも財務情報は比較可能性ということを重視している。つまり、売上高とか当期純利益、総資産などは、同一の会計ルールに従って定義された数字であるからこそ比較可能なのであり、そうであればデータとして取扱えれば利用者は便利である。ところが、勘定科目名称はある程度の統一感があるものの、データとして扱うには勘定科目コードやその科目の持つ金額が同じ意味を持つものかどうかということが重要になる。

そこでXBRLでは、例えば、「現金・預金」「現金及び預金」「現金及び現金同等物」といった会社によって異なる「表現」や、日本語や英語といった言語の違いをタクソノミという一種の統一的な勘定科目コード表によって統一しようとする試みである。

XBRLのもう一つの挑戦は、データが誰にでも扱えるテキストファイルであり、ベースはHTMLとXMLという言語使用を「拡張」して作られたもので、インタネットでの開示に非常に適しているということである。

財務情報をエクセルなどで扱ったことのあるものなら誰でもわかることだが、各社の財務データを一つ一つ再入力する作業ほど虚しいことはない。それ以上に、入力間違いなどが発生する危険性もある。ところがXBRLが普及することは、こういった再入力作業がなくなるのだ。しかし本当はそれ以上の効果が期待されるのだ。

それは現在でもインタネットで広く普及しているRSSという規格にヒントがある。 RSSは企業や個人のWEBサイトが更新されたらその情報を提供するもので、利用者はRSSリーダと呼ばれるソフトウェアなどを使って色々なサイトの更新情報を一覧できるようになっている。

つまり、企業がXBRLを使って財務情報を作成し、WEBサイトでRSSのようなものと組み合わせて提供できれば、財務情報の利用者はデータの更新や比較がタイムリーに手間をかけずに、また個人投資家も金融機関も全く同時に行なえるようになる。例えば、株式投資先の財務情報がWEBで更新されれば、手元のPCで瞬時に情報を見たり分析したりできるようになることが期待できる。あるいは、 A社の純利益がB社をX%上回った場合には、自動的に株式管理システムがB社株を売ってA社株の買い注文を出すといった使い方がされるかもしれない。怖い世の中である。

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