IT全般統制に関する重要な欠陥

2009年6月23日 | By 縄田 直治 | Filed in: 内部統制報告書.

E04967:株式会社ダイオーズの内部統制報告書(平成21年3月期) では、IT全般統制に関する重要な欠陥が報告されている。おそらくITに関する重要な欠陥の最初の事例ではないか。

3【評価結果に関する事項】
 下記の財務報告に係る内部統制の不備は、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高く、重要な欠陥に該当すると判断した。したがって、平成21年3月31日時点において、当社の財務報告に係る内部統制は有効でないと判断した。

 当社では、システムの保守及び運用の管理を適正に行うため、「運用・保守管理規程」を定めて遵守することが義務付けられているが、コンピュータデータの保全手続きにおいて、当該規程の運用が不十分であったため、会計データの一部が消失し、当期の財務諸表作成にあたって消失した会計データの修復作業を行うこととなった。

 事業年度の末日までに是正されなかった理由は、上記会計データのバックアップデータ復元作業のテスト実施が十分でなく、バックアップデータ消失のリスクを予見できなかったためである。

データ保全のためにバックアップを取っていたが、復元作業においてバックアップ自体が消失してしまい、決算日までに修復できなかったということなのだろうか。バックアップ態勢が財務報告統制として必要かどうかは、データの消滅による財務報告上の影響をリスクとして捉えるかどうかに関わるが、私見では、バックアップそのものよりも、データのリストアをした際に、その正確性・完全性・網羅性を担保できるかどうかという点を、統制の要点と捉える必要があると考えている。

付記事項を読むと、その点を踏まえての記載となっているのではないか。  

4【付記事項】
 評価結果に関する事項に記載された重要な欠陥を是正するために、事業年度の末日後、管理本部に取締役管理本部長直轄のプロジェクトチームを設置した。同プロジェクトチーム主導で、ハードウエアの修繕を実施するとともに、バックアップ及びリストアテストの実施に係る新たな業務フローを整備及び運用し、内部統制報告書提出日までに当該是正後の内部統制の整備及び運用状況の評価を行った。評価の結果、内部統制報告書提出日において、コンピュータデータの保全手続きに係る内部統制は有効であると判断した。 

2009・6・25追加:早速、訂正報告書が提出されているが、監査報告書の訂正である。経営者の評価結論の引用が誤っている部分と、財務諸表監査へ与える影響についての追記が漏れていたということのようだ。なお、下線は「有効でない」の「ない」に付されているが、「でない」に付けるべきだろう。

3【訂正箇所】
  訂正及び追加箇所は____を付して表示しております。

<内部統制監査>の文言一部訂正
(訂正前)
 当監査法人は、株式会社ダイオーズが平成21年3月31日現在の財務報告に係る内部統制は有効であると表示した上記の内部統制報告書が、我が国において一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠して、財務報告に係る内部統制の評価について、すべての重要な点において適正に表示しているものと認める。

(訂正後)
 当監査法人は、株式会社ダイオーズが平成21年3月31日現在の財務報告に係る内部統制は重要な欠陥があるため有効でないと表示した上記の内部統制報告書が、我が国において一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠して、財務報告に係る内部統制の評価について、すべての重要な点において適正に表示しているものと認める。

<内部統制監査>の追記情報の追加
(訂正前)
新設

(訂正後)
追記情報
 会社は、内部統制報告書に記載のとおり、「運用・保守管理規程」の運用が不十分であり、当期のコンピュータデータの保全手続きに係る内部統制に重要な欠陥があるとしている。上記の重要な欠陥に関連する会計データは、会社により全件修復が実施されており、これにより財務諸表監査に及ぼす影響はない。

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