IFRSの巡る最新動向

2019年11月30日 | By 縄田 直治 | Filed in: 未分類.

11月29日に、JICPAとJFAEL共催のIFRSセミナーに行ってきました。

IFRSは監査法人在職中もあまり接点がなかったので、弱い部分ではありますが、いろいろなことが公開で議論されるので、会計の考え方を学ぶにはいい材料です。半分は英語の勉強を兼ねているので同時通訳レシーバは借りません。

今回のセミナーで紹介された中で、パネルディスカションでテーマに上げられたのが、基本財務諸表の表示(損益計算書に営業損益を載せる)と、のれんの償却についてでした。双方ともにIFRSが日本に導入される際にかなり議論された領域です。

期首と期末の純資産の差額が純損益であるというIFRSの考え方は、企業活動の成果を表現すべきと考える日本人とはまったく違ったアプローチです。経営者の立場からすれば努力と成果が損益として表現されて、環境因子で変動するものをいちいち損益とされたのではたまらないというところもあるでしょう。IFRSはリスクを包括的に捉えてそれをうまくコントロールするのがマネジメントの役割であるという考え方があるようです。営業利益の導入によって、妥協点が見出されるところまでいけそうなので、日本の企業も持分法損益の区分などの細かい論点を除き比較的前向きに受け入れようとしています。

のれんの償却についても、IFRSは毎年度の評価に基づく減損のみでした。この点は日本の会計基準がのれん償却の考え方を捨てていないのは、ひとえに評価が難しく減損で一時的に損益が大きくブレるのを嫌う文化があるようです。ただ、M&Aを積極的に進める会社はむしろIFRSを選択する傾向があるのは、日本基準の償却の分だけ利益が嵩上げされるからでしょうか。今回のIFRSの検討は、単に償却を導入するということではなく買収後の情報開示のありかたそのものを見直すところに主眼があるようで、償却の議論に陥ることは戒めているようでした。

のれんについてはそもそもの議論として、償却と減損とが対立しているように見えますが、もう少し眼を高くして見ると、のれんを認識するかしないかという点の議論はあまりされていないようです。私は極論を使って考えながら物事の本質を捉えようとする思考の癖があるのですが、極論すればのれんはそもそも認識すべきではなく、配当なのではないかと考えるのはどうかと。

会計的に認識できる純資産と投資額との差額は、支配を喪失する売却株主に対する配当としての効果があります。つまり売る立場からすれば将来の配当期待を現在価値にして見たときに売却価格がそれに見合うから売ってくれるわけですから、配当の前払いみたいなものです。買う立場からすればそもそもそれは純資産からの配当ということになるので、のれん見合い分は純資産から控除されるべきです。凹んだ純資産は買収後の事業運営によって獲得される利益によっていずれは穴埋めされていくはず。このような処理を採れば、のれんの評価・減損という面倒な議論からは解放されますし、償却派にとっても償却期間をどうするかとか、償却によって損益が圧縮されて利益に買収効果が出てこないという問題もなくなります。買収の規模によっては純資産がギリギリに小さくなる可能性も否定できませんが、それ自体はリスクを表しているので受け入れられるべきでしょう。一方でROEの改善という効果もありますから。

どうお考えでしょうか。

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