バーチャル株主総会

2019年12月28日 | By 縄田 直治 | Filed in: ガバナンス.

色々な意味でコーポレートガバナンスの不全と活性化が議論されていますが、やはり最も肝心な議論は、会社の最高意思決定機関である株主総会を健全に機能させることです。

「バーチャル株主総会」という聞きなれない言葉は、株主が実際に総会会場に行かなくてもオンラインで総会に参加して審議に参加し議決権を行使できるということらしいです。https://www.meti.go.jp/press/2019/12/20191226005/20191226005.html

株主総会は原則として本店所在地で開催されますから、必然的に東京で開催されることが多くなりますし、地方在住者や海外の株主は総会に出席することが物理的困難が伴います。それを情報配信技術を使って総会を開催できるようにするというのは当然のことでしょう。

ただ、以前から疑問に思っていることですが、どうして株主総会当日に投票を締め切らなければならないのでしょうか。総会の制度がそうなっているというのは詭弁で、意思決定の方法論として捉えれば、総会以前にネットで投票するというのは書面だけで説明が十分であるという考えがあってのことでしょう。であれば総会を開催する必要はないわけです。総会は審議する場であって、議決はその後の一定期間内にして採決すればよいのではないでしょうか。

国政選挙であっても、辻説法だけでその日に答えを出して投票するわけではなく、公示されてから投票日まで時間があり、その間に期日前投票も含めて都合の良いときに投票できるようになっています。投票日当日は選挙運動はできませんので、有権者は粛々と投票するわけです。株主総会とてすでにオンラインで投票できるようになっているわけですから、総会当日に決議しなければならないという考えは単なる先入観でしょう。

概して言えることですが、新しい技術を使って既存の問題を解決しようとするときに、どうしても技術を使って方法の置き換えを図ろうとする発想をします。しかし、方法自体が古い技術環境を前提として成り立っているので、新しい技術を使っても大した効果は出てきませんし、却ってチグハグな状況を生むことがあるのは、業務システムの開発などでよくある現象です。新しい技術を使うときには、方法論の基礎に立ち返り「そもそもの目的論」からはじめていき、その目的を達成するために技術を実現手段としてどう組み合わせて使うかという方法で議論を進めてはいかがでしょうか。

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