新聞を読んでいると時々というかしばしば記事が誤解に誘導しているのではないかと思われることがあります。
こういう見出しの記事がありました。
ソフトバンクG、単体法人税極少 税務上は巨額赤字 繰越欠損金が税額圧縮
(2022年8月20日日経)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO63609760Z10C22A8EA5000/
「長年にわたり多くの利益を計上してきたSBGだが、税務面では巨額の赤字会社という「もう一つの顔」を持つ。」
ソフトバンクは日本企業ではあまり見られない積極的な企業買収やベンチャーへの投資によって利益を生むという戦略を持っています。当然にこのような投資はうまく行くこともあれば失敗もたくさんあり、むしろ失敗の数のほうが多いのが世の常です。繰越欠損金はそういった過去の投資の失敗が積み上がったものです。
一般に投資の回収は、投資した事業が生み出すキャッシュフローによるので、それが投資額を上回るには何年もかかります。もちろん時価が上がった株式を売却して一時的に利益を生むという方法もありますが、その後の旨味がありません。
このようなビジネスモデルでは、投資を積極的に続ける限り、損失が先行し利益が後からついてくるという損益構造にならざるを得ません。これは10年位の研究開発の結果として、ようやく日の目を見る創薬事業と類似しています。
むしろ投資を止めてしまえば、いまの投資先から得られるキャッシュフローだけで、業績を上げることもできますが、それは将来の成長を犠牲にしていると言えるでしょう。投資会社としてのアイデンティティは失われてしまいます。
日本は新しいビジネスが生まれにくいとか、リスクマネーがつきにくいなどと言われることもありますが、もともと繰越欠損金の控除期間が5年だったものを10年にしたのは、繰越欠損金を活用することで積極投資を税制面で支援する意図があったはずです。あたかもソフトバンク単体だけを捉えて法人税をほとんど納めておらずけしからんといったニュアンスで記事を書くのは、何に狙いがあるのでしょうか。
ソフトバンクはWEBサイトにて税務戦略を説明しています。
https://www.softbank.jp/corp/aboutus/governance/tax-strategy/
グループ全体で日本地域では37百億円の法人税を納税しています。