会計監査の在り方に関する懇談会

2015年10月26日 | By 縄田 直治 | Filed in: 監査と監査人.

金融庁が主催する「会計監査の在り方に関する懇談会」の第1回(平成27年10月6日)議事要旨がネットで公開されています。

http://www.fsa.go.jp/singi/kaikeikansanoarikata/gijiyousi/20151006.html

第一回の議題が、「今後の会計監査の在り方について」という壮大なテーマであり、各委員がそれぞれの立場で考えるところを述べており、ある意味では今の世の中で言われていることを少し専門的に言えばこういう意見があるのだろうなというところが、網羅されているのではないでしょうか。

一応「資料」も開示されていますが、それの中身を見ると、次のようになっていますので、出席者もそれに即した発言をしたのでしょう。

○ 関与会計士の力量
○ 監査法人のマネジメント
○ 会計監査の手法
○ 第三者の眼
○ 監査先企業のガバナンス
○ 各種基準・実務指針 等
会計基準
監査基準(品質管理基準・不正リスク対応
基準を含む)
内部統制基準
○ その他

会計士の立場から言えば、耳の痛い話がないわけではありませんが、議論自体は一方的な会計士・監査批判ではなく、会計・監査・会計士教育・経営者・手法など高いレベルから実務のレベルまで幅広く問題提起がされており、普段自分たちが感じたり考えていることが意見として広く出てきていることは評価したいところです。

唯一不満が残るのは、「監査=会計士」という図式が前提になっていることですが、会計監査の在り方は会計士の在り方と同義であるという前提を置くのは、今の公認会計士法がそうなっているからであって、私としてはその枠組みからはみ出て議論してほしいと願っています。

俯瞰すれば、専門家による職業が「何故」存在するのかという話と、その「何故」が明らかになった場合に、外部からの規制を含めて関係者とどのような距離感を持つことが適切な制度設計になるのかということでしょう。医療の世界では、手術の腕は名医から名医に伝わる部分と医者個々人で磨く部分とがあるでしょうし、医療器具の発達やこれをサポートするメーカーの存在、さらにはそういう名医が名医として活躍できるような病院のバックアップと経営があって、初めて先進的医療は成り立つわけです。

やはり従事者の能力による部分が一番大きく表れる業務であり、それをカバーするのが組織の品質管理ということになるのですが、ここのところはある意味では、各監査法人と会計士の努力とに委ねられていたのですが、もはやそれでは制度が成り立たないということなのでしょう。

この中から今後の制度改革に対するテーマが出てくるのでしょうが、ここでどういうテーマが選ばれるのかが、監督当局の姿勢が表れるところです。会計制度に対する意見も出ていましたが、この場で会計制度を変える議論はできないでしょうから、この後のテーマの絞り方がある意味で日本の今後の監査制度を決めてしまうといっても過言ではありません。「有識者等の意見を踏まえた上で、(当面、急いで対応が必要と思われる点に絞って)以下のテーマについて今後の議論を進めていきたい」となったときに、()内の部分がどういう書きぶりになっているか、今後注目しておきたいですね。

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