金融庁から「国際財務報告基準(IFRS)に関する誤解」が発表された。
http://www.fsa.go.jp/news/21/sonota/20100423-2.html
誤解といえば内部統制報告制度も類似の文書が出された。
一般的には誤解を生ずる原因は情報が的確に伝わっていないからで、これだけ情報技術が発達した時代においてもやはり人間の理解のスピードには限界があることがよく分かる。換言すれば、既に情報技術は人間の処理能力を超えていることは明らかだが、それによってもたらされる情報量が人間の処理能力を超えているとすれば、いったい何のためのITなのか考えねばならない。ITは人間を情報処理から解放し判断しやすくするためにあるはずである。さらにその情報過多が人間の判断を誤らせているとすれば、危険なことでもある。
例示されている「誤解」の中には、本来の誤解ではなく企業側の思考停止と思われるような内容もある。
例えば、
誤解3「全面的なITシステムの見直しが必要か」
誤解4「社内の人材のみではIFRSに対応できないのではないか」
誤解10「これまでとは全く異なる内部統制を新たに整備しなければならないのか」
などはそもそもIFRSの導入にかかわらず企業側が継続的発展をかけて実態に応じて常時考えていなければならない問題である。
監査には指導性と批判性とがバランスよく並存していなければならないというのは、監査論を勉強した者なら誰でも知っていることだが、エンロン事件以降、批判性ばかりが強調されすぎて指導性が隠れてしまっている嫌いはないか。IFRS導入に関しても、まともな監査人であれば上記のような誤解を生ませるような指導はしないはずだが、監査人が保守的になっているとすればその原因自体を解決する必要もあろう。専門家がその立場において自由な意見を言えない風潮は危険であり、どこかひずみが来ているとすれば、監査制度自体の設計の見直し論に発展しかねない。
・・・と、いろいろ考えさせられる。
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