企業財務委員会:会計の国際化に対応した国内制度のあり方(中間報告)

2010年4月25日 | By 縄田 直治 | Filed in: 開示制度.

企業のCFOなどが中心になって動いている企業財務委員会(事務局は経済産業省)が、IFRS導入に当たって日本の会計制度について議論したものが中間報告として公表された。

経済産業省 企業財務委員会中間報告書の公表について

http://www.meti.go.jp/press/20100419004/20100419004.html

要約版を見たところ3つの骨子が示されているが私見は次のとおり。

1.連結と単体の議論の分離

IFRSは支配概念に基づく連結会計を基礎としているが、日本の会計は会社法、税法とも法人格を単位とした会計制度として構築されている。また市場の投資家に意思決定のための情報を提供するIFRSの目的と、課税の公平性や配当可能利益の計算(債権者保護)を目指している国内会計とはそもそも目的が異なれば計算方法も異なるところを、一括して議論されている(かのように見える)現状をどう解決するか。

特にIFRS導入によって始まった議論ではなく、連結決算制度が日本に導入される頃からずっと議論され結論が出ないままにされてきた話である。当時は税法の確定決算主義と制度会計との乖離が焦点ではあったが、議論の本質は、単一の認識測定方法で複数の目的が同時に達成できるかという点であり、また企業業績の測定方法は目的中立的に可能なのか、それとも目的に応じた複数の方法を前提に設計されるべきなのかという議論であり、このあたりは会計学者や実務専門家(公認会計士・税理士)が鳴りを潜めている点、反省すべきであろう。

2.開示制度全体の再設計

会社法と金融商品取引法と各種事業法とが並存している開示制度や、開示事務負担、有価証券報告書が年々厚くなっていくなかで、インタネットなどの新たなメディアを利用した開示制度、非財務情報の開示などの議論が必要である。

特に開示タイミングという意味では、財務諸表、財務情報、非財務情報を分けて考える必要がある。情報は新しいほど価値があるが他方で咀嚼して解釈された情報(経営者の視点)も投資家にとっては重要である。

数値の適正性と開示の迅速性とは相矛盾する要素であるが、監査制度はその狭間に置かれ、しわ寄せを受けている点も、きちんと検討しなければならない。

3.非上場会社のための会計

議論の本質は1と2に集約されるが、制度設計として非上場会社と上場会社とでは社会的影響が異なるため、分別した議論が必要なのは当然である。

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