内部統制の議論をしていて、よく分からない言葉に「不備」と「欠陥」がある。
元々、米国の基準では、design of control、effectivenss of control、control
deficiency、weakness in controlなどの言葉が使われているが、これらが日本語に翻訳される際に、翻訳の品質よりも時間が優先されたため、あやふやな言葉が跋扈している現状を招いたと思われる。
現状では、design=整備状況、deficiency=不備、effectivenss=有効性、weakness=欠陥、と訳されているが、その意味するところと日本語の語感は明らかに異なっている。
新明解国語辞典(三省堂)によれば、
・不備=十分に備わっていないこと
・欠陥=構造上・機能上不十分で、致命的な事故などを誘発しかねない短所
とあり、不備とは文字通り備わるべきものが備わっていないことを意味するが、欠陥はそのなかでも「致命的」な状況を指していることから、不備のレベルを加味した判断の加わった言葉である。だからあえて「重大な」欠陥という言い方をする必要もないのかもしれない。
Internal Controlの訳語である内部統制の概念がそもそもあやふやであるというのもよくない。それは内部統制の不備というときにもっとも端的に現れているが、内部統制の目的(財務報告の信頼性確保)というレベルでの不備と、その構成要素としての統制環境の整備というレベルでの不備と、個々の統制活動というレベルでの不備とがあるなかで、いずれも「deficiency=不備」という言葉で表現しようとしているところに制度上の「不備」があるのではないか。いずれも、有効であることはeffectivenessで表現できたとしても、問題となる事象はどのレベルの問題なのかを明確に表現しなければ誤解をまねくのは当然である。この点、致命的な不備を「欠陥」と表現したことは評価しなければならない。
こうなると、会社全体としてではなく、環境整備や運用(勘定科目レベルや個々の取引)レベルにおけるdeficiency(不備)に対しても、それを表す言葉を用意してやればよいのだ。
私は以下のような表現・文脈を用いることを提案したい。
1.設計上の不備—-某目的を満たす必要な手続に瑕疵(きず)がある、必要な手続が脱落し(もれ)ている。
2.運用上の不備—-手続の運用を懈怠した(おこたった)、手続の運用の遺漏(誤りや漏れ)。
以上の事実に基づく判断が以下である。
3.監査報告レベルでの不備—-内部統制に欠陥がある。
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