厳格な会計基準

2007年7月1日 | By 縄田 直治 | Filed in: 会計原理.

最近の会計処理基準はやたらと細かいという批判をよく耳にする。会計が企業業績の測定という使命を負っている以上、正確な測定を目指すのは宿命的なところもあるが、ただ正確と言っても所詮は数字の用途によって求める精度は異なってくる。

例えば水銀体温計は0.1度刻みで測定できるようになっている。大まかに言えば、36.3度が平熱であれば、37度を超えると少し熱があるな、38度を超えるといよいよ病気だなという判断ができる。それが37.1度であるか36.9度であるかはさほど問題ではない。あるべき平熱と比較してどうであるかが問題なのであって、0.5度くらいの刻みでも十分である。ただ、病院などで入院患者の経過を測定するという意味では、もう少し細かいほうが観測しやすいことから、おそらく0.1度単位に落ち着いたのだろうと思う。

会計もそれと同じ理屈で、用途に応じた正確さがあればよいのだから、たとえばDCFのような方式は、解釈に幅のある割引率とか年数というファクタがある限り、測定される数字にはかなりのブレが出る。そういったブレが出る考え方と、一律に割り切る考え方と、どちらが「比較可能性」という意味において有用な情報を提供しているのか、考える必要があるだろう。むしろ、どういう前提に立ってそういうファクタを採用したのかという情報のほうがよほど重要である。

平成20年度から四半期レヴュ制度が導入される。
四半期決算においては情報の迅速性を重んずる考えから簡便な会計処理が認められているが、正規の決算における会計処理がどれだけ四半期に比べて有用なのか、投資家はきちんと議論すべきだろう。会計情報の精度よりも情報の開示範囲やコンテクスト(そこに織り込まれている経営者の判断や、他社・過去などとの比較)における意味合いのほうがよほど重要なのではないかと思われる。

もし、有用ではない情報を会計制度が強要しているとすれば、それは社会的損失を招いていることになる。

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