継続性の原則

2007年3月11日 | By 縄田 直治 | Filed in: 監査会計用語.

企業会計原則では、会社は財務諸表の作成に当たって会計方針(会計処理の原則及び手続)を定め、一旦採用した会計方針はみだりにこれを変更してはならない旨を定めている。

継続性の原則が求められるのは、なにも会計だけの話ではない。「測定」という概念の裏側にはその測定方法の継続性による比較可能性の確保という考え方がある。つまり数字はそれ単独では意味を持たないから、必ず何かを尺度の基準として数字を比較しなければならず、会計の場合には「前期比」「他社比」「予算比」とよく言われるように、必ず比較して財務数値を眺めて企業の業績を判断することになる。

会計方針の選択は企業に最も適した方法を採用すべきであるから第一義的には経営者の選択判断によることになる。そしてこの継続性はその測定方法が合理的である限り保持されるべきであるが、反対に新たな別の測定方法を適用することによりさらに高次の合理性が見出される場合には、新たな方法を採用すべきということも含まれる概念であることは言うを待たない。例えば企業活動の変化で、ある取引が重要性を増してきた場合で、従来簡便的な方法で会計処理していた事象をより正確な方法で処理するという場合には、継続性の変更が認められる(というよりは、変更せねばならない)。

ところが実務では、この「変更せねばならない」状況に置かれたときにでも「継続性の原則」を根拠として変更してはならないという反論が聞かれることがある。もちろん変更の合理性は議論しなければならないが、経営者の判断であるとして土俵に上がることすら拒否されたのでは、監査人も困ってしまう。

会計人である以上は、より合理的に企業活動を表現できる方法を常時求めるという原則を、企業側も監査人側も守りたい。経営者はそういった経理担当者の心意気に対してきちんと理解を示さないと、結果として自分の会社の真実がぼやけて見え、そしていずれは全く違うものが見えるようになり、裸の王様になってしまうことを知っておくべきだ。

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