内部統制

2007年3月11日 | By 縄田 直治 | Filed in: 監査会計用語.

内部統制とはInternal Controlの訳語であるが、それは「内部」という言葉の捉え方など複数の違いを原因として、解釈に幅が出てきており、時には会話が成り立たないことがあるので注意したい。

(1)企業外部者による統制 vs. 企業内部者による統制

 株主、顧客などのステークホルダによる会社の活動の監視(=これ外部統制というを言えるとすると)に対して、企業の内部にいる経営者以下の役員、職員による統制の仕組や行為を、内部統制という。

(2)経営者によって行なわれる活動 vs. 経営者を監視する活動

企業のオーナ(株式会社であれば株主)から負託を受けた取締役会が、代表者たる経営者(代表取締役)を選任し、その経営者が自らの経営責任を全うするための組織システムを内部統制という。委託者と受託者の関係を前提とした、受託者側の具体的な監視活動とも言える。 これに対し、同じく企業のオーナから負託を受けた、監査役が取締役会を監視する仕組み、あるいは取締役会が経営者を監視する仕組は、内部統制に含まれない。

 経営者が内部統制の中にいるのか外にいるのかの違いがあるので両者には大変な違いがある。

私は、経営者は内部統制と外部統制との接点にいるものであるとの考え方に立っている。すなわちコーポレートガバナンス(外部統制)の中で、ある意思を持って経営を執行者たる経営者を位置づけ、執行者が使用する「仕組」を内部統制と位置づける。 経営者は一つの意思を持った存在であり、株主からの付託をそのまま実施するだけの機関ではない。そこには株主から離れた人格と識見と知恵と倫理とが求められるはずであり、それは時に株主利益との相反が生ずることもありえる。

(3)法的観点からの違い

平成20年4月から施行される金融商品取引法における「財務報告にかかる内部統制」(=ここでは財務報告統制とする)と、平成18年5月に施行された会社法362条4項における体制(=ここでは内部統制という言葉は一切使われていないが、巷間ではこれを指して内部統制とされているようだ)とがある。但し、両法律ともお互いの関係については触れていないし、お互いの概念が重複している部分と独自の部分との境界線がどこにあるのかも分からない。

(4)「財務報告にかかる内部統制」における日本と米国との違い

ここまで来るともはや「おたく」の世界だが、対象としている財務報告の範囲が異なっているためにこのような違いが生じている。米国では、財務報告の範囲を年次報告書の財務諸表と注記情報というように限定的に捉えているが、日本では、ほぼ上記米国の範囲に重なる有価証券報告書の経理の状況の記載以外にも、大株主の状況など結果として財務報告に重要な影響を与える部分も含まれているからである。

内部統制の解釈はさておき、それが目指しているものは不確実性の高い世の中において不確実さから来る不測の損害から企業を(株主を?従業員を?顧客を?)合理的に守ることを目的としているはずである。あまりに枝葉末節に入った議論をするまえに、経営者が利害関係者間のバランスをどのように図るのかという方針を明確にし、その中での内部統制への取組のウェイト付けを明らかにしていかねばならない。それが正しいかどうかは利害関係者の声で判断すればよい。換言すれば内部統制を法律という枠組みで概念規定することは、「法さえ守っていればいいのか」という議論や、「法律には書いてないよね・・・だから・・・」という本末転倒な話が出てきそうで胡散臭いのである。

しかしそれを実現するためには、企業を理解するための情報が余りにも不足しているのではないだろうか。

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