財務報告が適切に行われているといえるためには、勘定科目や注記項目などの情報が企業の取引実態に応じて表現されている必要がある。この「取引実態に応じて」というところを要素分解したものが、統制要点とかアサーションと呼ばれるもので、
- 取引が事実に基づいて漏れなく記録され
- 適切に区分されて正確に集計され
- 残高の評価が適切に行われ
- 収益の実現やその他損益の期間帰属が誤りなく処理され
・・・・などの項目である。
監査人の立場からは監査要点と呼ばれることもあるが、財務報告の適正性という観点からは、経営者も監査人も目指すところは一緒なので、通常、アサーションと監査要点とは一致する。
このアサーションを確保する行為が「統制行為」「統制活動」と呼ばれる(巷間コントロールと呼ばれることが多い)。
つまり、アサーションの確保(目的)のために様々な統制活動(手段)が存在するのだから、アサーションの決定に当たっては、「この統制活動がどのアサーションを確保しているか」というアプローチをするのではなく、「このアサーションは、どのような活動によって確保されているのか」という問いを立てることが必要である。つまり、「始めに統制活動ありき」ではなく、先ず「統制目標」としっかりと立てて、そこに必要な統制活動を「探索」するのである。
このアプローチの方向性を間違うと、幅広かつ無分別に統制活動を拾い上げることになり、「本当に最低限必要な統制とはなにか」という議論ができなくなるおそれがある。統制活動の探索は経営者評価にあたってはリスクの峻別と対応する最も重要な手続だから、ここを安易に出来合いのチェックリストなどに頼ってしまうと、後で評価範囲が拡大してしまうことになるかもしれない。
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