平成22年5月21日企業会計審議会が開催され、3回目を迎える内部統制報告制度に見直しがかけられる模様だ。
報道によれば、全体としては「簡素化」を眼中に置いているとのことだが、これがまた誤解(条文の簡素化なのか、企業の作業負担の簡素化なのか、監査人の負担の軽減なのか)を招かないように、きちんと読んでおきたい。
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/naibu/20100521.html
添付資料の3-3に具体的な検討項目が列挙されているが、大きくは4つの観点である。
(1)中堅・中小上場企業に対する簡素化・明確化
リスクアプローチに立っていれば、既に中小企業は中小企業なりの工夫をしているし、監査人も微細なことについて「あるべき」を振りかざすようなことはしていないはずなので、既存の制度の趣旨を確認したものと理解できる。
(2)制度導入2年目以降可能となる簡素化・明確化
持分法適用会社の評価・監査方法として、親会社が上場会社であれば、親会社等から何らかの確認書面を入手すれば足りるとする扱いを考えているようだ。
しかし、そもそも持分法会社は支配の及ばない会社であり、そのような確認書を徴求させることも難しいのではないかというのが、私見である。
建前として評価対象とすることの重要さはあっても、持分法適用会社の場合には、決算情報すら適時に入手できなくて困っているケースも実務では見られるところなので、例えば決算開示で持分法適用にあたっての基礎情報を何に基づいているかを開示すればそれで十分ではないかと考えるのだが。
「3分の2」という評価範囲の考え方が削除された。これは経営者評価としての範囲を言っているのか、会計士監査の内部統制の評価範囲を言っているのか不明だが、少なくとも会計監査の評価範囲は監査人のリスク判断で決まるものなので、経営者と監査人の評価範囲が一致しなくてもよいということを明示してほしい。
また経営者の評価サンプルを監査人がそのまま利用しないことが企業にとって負担となるとの認識が示されているが、これは実施時期の違いやサンプルの考え方が異なるので、むしろ違っていることが当たり前という前提を置かないと、監査人が経営者の評価サンプルをそのまま利用することを推奨するような制度設計をしてしまうと、会社側に相当の負担がかかることになる。米国Sox法はこの縛りが全くないので、逆に経営者側の評価が監査人の監査手続に影響されず柔軟に行えるというメリットがあることをよく耳にする。
(3)その他の明確化
「重要な欠陥」の判断基準を削除なども検討しているようだ。
これは何が重要な結果に該当するかを会社側に開示させるべき問題で、ある程度、重要な欠陥を緩く考える会社と厳しく取り扱う会社と違いが出るところに意義がある。商品の品質管理をどこまで厳密に考えるかということと同じであり、投資家が判断すべき事項ではないのか。
最もショックだったのは、訂正内部統制報告書には監査報告書を提出する必要がないという方向で検討しているとのこと。
有価証券報告書のみの訂正報告書を提出(つまり、添付書類たる内部統制報告書は訂正がない)の場合、監査報告書の提出義務がないのは当然だ。しかし本来は、書類の建付け上、添付書類である内部統制報告書に対する意見を一体監査の建前を貫くために監査報告書だけを「一体化」してしまい、提出書類は「添付書類」という扱いにしているところから問題が発生しているところに着目すれば、監査報告書を初めから別々にしておけばまったく問題がないことである。
(4)「重要な欠陥」の用語の見直し
企業自体に欠陥があるとの誤解を招く恐れがあるとの指摘を受けて、言葉を見直すようだ。
もともと、「重要な欠陥」という表現は、語気・語感が良くないことは、私もパブリックコメントに出した。
制度の趣旨からすれば、「XXXXのプロセスにXXXXの不備があり、XXXXの虚偽表示に関するリスクが許容可能な水準にまで軽減されていない」とそのまま表現すればよいと考えている。
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