内部統制報告制度には財務諸表開示制度と同様に「後発事象」という概念がある。
財務諸表における後発事象とは、「決算日後に発生した会社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす会計事象」のことである。
通常、開示される後発事象は、重要なものに限定されるが、それを開示する主旨は、一般に決算情報が開示される時点と作成される時点との間の情報の時間的ギャップを埋めることで、利用者により現在に近い情報を提供する意図があるとされる。
では、内部統制における後発事象とはなにか。
実施基準5(3)においては、追記情報として以下の開示が求められている。
丸2 財務報告にかかる内部統制の有効性の評価に重要な影響を及ぼす後発事象
丸3 期末日後に実施された是正措置等
すなわち、決算日現在の内部統制の有効性に意見に関して影響する、決算日後に判明した不正や不備により新たに重要な欠陥となるような事象や、もともと重要な欠陥をもたらした不備の是正措置などが想定される。
しかし、単なる内部統制の変更は含まない。
議論の分かれるところは、大規模な組織変更やM&Aによる新たな組織の発生・消滅のあった場合に、期末日現在の状態を「消滅」させるような事象があったときの開示である。典型的なのが、純粋持株会社が事業会社を売約した場合や、全社を網羅するような大規模なシステムの新たなカットオーバがあったような場合である。
もともと決算財務報告を適切に行うための決算日現在の内部統制が評価の対象なのだから、決算日後に組織変更等あっても決算日現在の状況に影響を与えるものではない。したがって、これを後発事象として開示する必然性はないのでは、と考えている。
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