経営の失敗学

2014年12月28日 | By 縄田 直治 | Filed in: ブックレビュー.
経営の失敗学
経営の失敗学

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菅野 寛
日本経済新聞出版社

著者はボストンコンサル(BCG)のOBで一橋ICSの教授。先日、ポーター賞の授賞式の際に初めて見かけたご縁あってか偶々書店で見かけたのが本書である。書店をぶらつくのは、知的好奇心を惹起するのみならず、新たな知との縁を結んでくれる場であることから、意識的におこないたい。

サブタイトルは「ビジネスの成功確率を上げる」とあるように、コンサルタントとしての実感から「成功はユニーク(独自)である。したがって、成功はパターン化出来ないし他者の成功をモノマネしても成功しない」「ビジネスは失敗するパターンがある」というところからスタートする。必ず失敗する「地雷」を避けながら、戦略を遂行していくにあたっての注意点を多くの事例を交えながら解説してあり、数式や小むづかしい理屈は一切抜きである。

戦略の位置付はさほど大きくないという。戦略を作ることはさほど難しくはないが、むしろ結果的に戦略は正しかったがそれを実行する段階で多くが失敗するらしい。そこには人材の投入というこれまた難しいテーマがある。エース級の人材を投入しモチベートしていくということが要になることが強調されている。

ビジネスの本質を見極めること、そしてそれを絶対に譲ってはならないという主張は、そのビジネスが世の中に存在する意義を考えなさいということに置き換えることができるだろう。まさに「本質」に人類普遍性があれば世界的な企業になり得るし、特定地域であっても成功することができる。換言すれば、成功することとは金儲けすることでもなければ大きくなることでもなく、本質に対して市場が価値を認めてくれるかどうかである。

未来を想像するのではなく創造する。未来を予測して追随するのではなく自ら創ること、そのために周囲を説得して影響を与え共感を得て人をその方向へ動かす例としてアラン・ケイの描いた絵(1972年のPCのイメージで、いまのタブレット端末そのもの)が挙げられている。

最後には、「ビジネスの成功には秘策や奇策はない・・・意志の力でやるべきことをやりきれるかどうかで決まる」と締めくくる。

実用書として読むよりは、自らを励ましながら「地雷」を踏まないように仕事をしていくための本として、組織でリーダシップを執る人たちに推薦したい。

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