少数株主持分

2009年6月14日 | By 縄田 直治 | Filed in: 制度会計.

少数株主持分は純資産の部に株主資本とは別に表示されることになっている。すなわち、連結財務諸表を作成する会社が支配している会社(子会社)の純資産を、支配獲得後に得た持分とそれ以外とに区分し、後者を少数株主持分として表示している。

もともと少数株主持分という考え方は、連結財務諸表作成会社の支配が及ぶか否かをキーとしていることから、共通支配下の場合における少数株主持分の考え方は、もう少し慎重に考えなければならないだろう。

例えば下記のような例を想定してみる。

A社は、親会社P社の完全子会社であるが、P社の中で特定の事業領域を持ち傘下の事業を統一管理するため、連結決算を行っている。A社には同じくP社の完全子会社であるB社が兄弟会社として存在するが、A社とB社とは、P社グループではないM社からの出資を得て、共同である事業を始めるため、Y社を設立した。Y社から見た株主構成は、A社(60%)、B社(30%)、C社(10%)である。

この場合、連結決算を作成しているA社はY社の少数株主として、B社とC社とを認識し、合計40%の少数株主持分を計上することになる。しかし、A社の株主はP社でありA社の株主資本は全て親会社のP社に帰属し、同様にB社のY社に対する持分(つまり、A社が少数株主持分として計上した30%部分)についても、最終的にはP社の持分になる。

A社もB社も親会社P社の意思決定の下に行動しているわけだから、Y社に対する意思決定は同一意思の下で行われると考えざるを得ない(例外は認めるとしても)。そうすると、A社の連結決算に計上される「少数株主」に帰属する割合は、C社10%部分と考えるほうが、実際の意思決定割合をより反映した結果にならないだろうか。つまり、機械的に算出した少数株主持分の中に親会社持分がある場合には、その中に支配権を持つ株主持分と支配権を持たない株主持分とが存在するため、本来の少数株主とは支配権を持たない後者を言うのではないか。と考えれば、本例では少数株主持分は40%ではなく10%という考え方もあるのでは。

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