平成20年度公認会計士試験合格者発表

2008年11月22日 | By 縄田 直治 | Filed in: 監査と監査人.

先週、金融庁公認会計士監査審査会より平成20年度の公認会計士試験合格者が発表された。合格者数3625名、合格率17.1%という数字は、受験者数4635名、合格者数394名(昭和62年二次試験)であった自分の頃からすると隔世の感を禁じえない。

2年前から試験制度が変わり、試験の方法も試験の内容もレベルも大きく変わってきている。門戸を開き若い人が沢山業界に入ってくることはよいことである。他方、入りも多ければ出も多くなり、それだけ人の入れ替わりが激しくなる。プロの世界ゆえに、やっていけない人は早いうちに見極めをつけたほうがいいし、特殊な会計士業界で食っていけないことが駄目な人を意味するわけではない。プロ棋士は中学生くらいのときにプロの門を叩くかどうか選別されるが、それはその後、高校・大学へも行かずに囲碁の勉強だけして本当に強くなれなかったときに他の仕事ができないのことを考え、やり直しができるようにという配慮だという。それに比べれば、監査会計の知識はかなり「つぶし」の利く分野である。

合格者が増えて以前と比べて大きく変わったことは、人をつけてじっくりと諭しながら育成するという方法はとれなくなったことだ。これだけ新人が多くなると畢竟マスプロ的人材育成方法を採らざるを得ない。入ってくる方もそれを見越してか「研修の充実」といったことを期待している人が多いようだ。しかし、勉強は自分でするもの、知識は先輩から盗むもの、経験は現場で積むもの、機会は見出すものと鍛えられてきた旧世代は、勉強は教わり、知識はネット検索、「濃い」経験は御免蒙りたいという新世代の思考には戸惑いがある。

確かに、形式知は書物やネットでいくらでも得ることができる時代になった。しかし、監査で最も必要な「職業的懐疑心」は、いいクライアントに巡り合えて「本物の仕事」に沢山接することにより徐々に醸成されるものだ。種が芽を出し茎を伸ばし実をつけるには、太陽と空気と養分と肥料と大地が必要だ。しかし生体そのものに根を張り養分を吸収し光合成する力がなければ、実はならない。

賢慮を身につけるには相当時間がかかるし、一方的に教わるものではない。一番大切な要素は自分が持っている目線と姿勢である。それは覚悟して業界に入ってきてほしいし、またそれを自覚させられるような仕事や先輩にめぐり合ってほしい。あえて言えばそれも実力のうちである。

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