四半期制度における中間監査基準と継続企業の前提

2008年11月30日 | By 縄田 直治 | Filed in: 監査制度.

平成20年度より四半期レビュー制度が動き始めた。金融商品取引法ではレビューといえども監査の枠組の中で考慮されているので、監査という言葉も時と場合によって意味合いが異なることがあるため注意を要する。「監査基準」は金融商品取引法における(連結)財務諸表監査と会社法における(連結)計算書類監査を対象としている。したがって、金融商品取引法固有の中間監査やレビューは、それぞれ「中間監査基準」や「四半期レビュー基準」が制定され、それぞれ一般に公正妥当と認められた監査(レビュー)の基準とされている。

実はこの四半期レビュー基準(最終改定:2007年3月27日)が大きな曲者である。例えば継続企業の前提に関する検討については、以下のようになっている。

三 実施時期等

3 「2 実施基準 (3) 継続企業の前提について」に関連して、「中間監査基準の改訂について(平成十四年十二月六日企業会計審議会)」の前文において、「中間監査においては、少なくとも当該中間会計期間の属する事業年度末までの期間における合理的な経営計画等の提示を求め検討することとする。」とされているが、これについても、本四半期レビュー基準の実施に当たって、「中間監査においては、前事業年度の決算日における継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況に特段の変化がなければ、少なくとも当該中間会計期間の属する事業年度末までの期間における合理的な経営計画等の提示を求め検討する。また、前事業年度の決算日における継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況に大きな変化がある場合、あるいは、前事業年度の決算日において継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在していなかったものの、当該中間会計期間に継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況が発生した場合については、少なくとも当事業年度の下半期から翌事業年度の上半期までの期間における合理的な経営計画等の提示を求め検討することとする。」とすることに留意する必要がある。

一方、公認会計士協会監査基準委員会「中間監査(監査基準委員会報告第17号)」(最終改正平成20年3月25日)においては、次のような記載がある。

継続企業の前提

22.中間監査においては、次の事項について監査基準委員会報告書第22号「継続企業の前提に関する監査人の検討」により、検討を行うことになる点に留意する必要がある。
・ 前事業年度の財務諸表等における継続企業の前提に係る注記に記載されている事象又は状況の変化並びにそれらに係る経営者の判断及び経営計画等の変更
・ 中間会計期間に発生した継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況並びにこれらに係る経営者の評価及び経営計画等の合理性
なお、中間監査における継続企業の前提に関する監査人の対応としては、前事業年度の決算日における継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況に特段の変化がなければ、少なくとも当該中間会計期間の属する事業年度末までの期間における合理的な経営計画等の提示を求め検討することになる。また、前事業年度の決算日における継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況に大きな変化がある場合、あるいは、前事業年度の決算日において継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在していなかったものの、当該中間会計期間に継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況が発生した場合については、少なくとも当該中間期末から1年間の経営計画等の提示を求め検討することとなる。

さらに、中間財務諸表規則ガイドライン(平成18年5月1日 公布)の第一章 総則5の18-1には次の記載がそのまま残されている。

規則第5条の18に規定する継続企業の前提とは、「中間監査基準」にいう継続企業の前提をいうものとする。

中間財務諸表の作成者である経営者は、中間会計期間における状況の変化を踏まえて期末までの計画を踏まえて継続企業の前提を評価すればよいということになっているが、監査人は翌中間会計期間末までを評価の対象にしなければならないという建付けになっている。
そもそも保証の水準が監査とレビューとでは全く異なるといわれているにもかかわらず、手続としてはレビューのほうがより厳しいものとなっている。しかも、通常は上位の制度を下位の制度がより具体的に決めるということになっているはずだが、同列にあるはずのレビュー基準が中間監査基準の内容を変更するかのような記述になっている。中間監査基準およびその下位基準を見ても、入口の異なる他の基準を見なければ中間監査手続が満足できないのであれば、それは制度として片手落ちといわざるを得ない。このような建付けは徒に制度を理解し難くしてますます監査に対する不信感を募らせるだけでなく、そもそも「弥縫策」とも言える対応は全く理解に苦しむところである。

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