企業にこっそり教える だまされないためのIFRS対策の本

2010年12月23日 | By 縄田 直治 | Filed in: ブックレビュー, 制度会計, 開示制度.

一言で表現すれば、極めて正直かつ真摯な姿勢で書かれた本である。むしろタイトルが安っぽさを感じさせる嫌いがあるが、出版社の事情によるかもしれない。

前半は巷間言われているIFRSにまつわる根拠があやふやな話をQ&A形式でばっさりと斬っている。
IFRSの導入には「面従腹背」(制度は受け入れつつこれまでの方法をなるべく踏襲する)の姿勢で臨めとするQA3は、会計が根本的に変わると噂されるIFRSに対してもっと冷静になれと諭す。

IFRSによって決算の企業間比較可能性(会計の存立意義の一つ)はむしろ阻害されるとするQA7、あるいは、時価純資産に注目する投資家には役立つが利益成長性に注目する投資家には現状維持程度というQA13などは、投資家のための情報提供であって企業経営に役立たないという実務家に多い意見を超越したIFRS自体に対する痛烈な批判である。

そしてQA14でそもそもIFRSはそのままでは経営にはほとんど役立たないと一刀両断。痛快。セグメント情報でマネジメントアプローチが用いられるようになったときに、全体としての決算はポートフォリオ情報、セグメント情報が本当の業績決算であるという話をしたことがある。セグメント情報と制度決算との差異を説明しろという制度は、ある意味において制度決算側の実務に対する敬意と譲歩ともいえる。穿った見方をすれば、差異については経営者は気にしていませんという宣言でもあり、制度決算が業績評価には役立ちませんと宣言しているようなものだ。

IFRS対策で、監査法人とは「先手必勝」で臨めとするのは、監査人の立場からも推奨したい。

Print Friendly, PDF & Email

Tags:

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

超難解計算問題 *