ARMの解釈

2022年9月20日 | By 縄田 直治 | Filed in: 統計.

$$\alpha = \theta (1-\gamma)(1-\delta)$$

\(\gamma\)と\(\delta\)はそれぞれ内部統制によって検出される虚偽表示と監査によって検出される虚偽表示という説明もあり得ますが、そもそもリスクの全てが虚偽表示となるわけではなく、リスクのリスクたる所以は正しいのかどうかがわからない「未確認」状態にあることによるわけですから、むしろ、内部統制ないしは監査人によって確かめられた割合(虚偽表示も含む)と解する方が納得感があります。

そうすると、リスクとは想定されうる虚偽表示からそれが実際にあるかどうかが確かめられた残りの「確かめられていない=確信が持てない」部分という解釈ができます。

さらに言えば、式に出てくるあらゆるパラメタは、全て\(\theta\)によっており、この値は監査人の想定するものになります。さらにまた\(\gamma\)も\(\delta\)も客観的な事実として存在するのではなく、やはり監査人が内部統制の評価手続の結果として確かめられたと信頼をおくレベル、また実証手続によって確かめられたと信頼をおくレベルを表していることになります。

つまり、ARMは何か客観的な基準や算出方法によるものではなく、元々が監査人の考える主観的なリスク構造を表しているものと言えます。換言すれば、潜在的な虚偽表示は事実として財務諸表の中に潜んでいるものの、それ自体はフタを開けてみなければ誰にもわからないものなので、リスクの評価は何か客観的な検出方法論があるというものではなく、監査人独自の判断(確信の度合)によっているということです。もちろん財務諸表作成者たる経営者も自らの作成責任において、虚偽表示を出さないようにしているわけですが、内部統制の有効性に対する確信も、監査においてそれを固有リスクを含めてどの程度のものかと判断するのは、監査人のみが責任を負って考えるところです。まさに二重責任の構造が現れています。

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