デジタル・トランスフォーメーション

2021年2月7日 | By 縄田 直治 | Filed in: 組織力.

バズワード?

標題のような単語がDXという略称で飛び交いはじめてしばらく経ちますが、新型コロナウィルスの緊急事態宣言に伴う給付金交付のバタバタや、在宅勤務推奨される中で書類に押印するために出社せざるを得ないことを例え話として、日本のDXが遅れているという批判に用いられることもあります。一方、いわゆるバズワード(流行り言葉)の一つということで、いずれ消滅するか、かつての戦略情報システム、ビジネスプロセスリエンジニアリングなどのように、また言い方を替えて別の言葉が出てくるだろうという冷ややかな見方もあります。流行り言葉といえば、イノベーションもよく用いられる廃れない言葉なので不朽(普及)の名作かもしれません。

迷ったときは原点回帰

「うちの会社もDXだ〜」と経営者が叫べばどうにかなる問題でもなく、人によって解釈も捉え方もまた置かれている状況も異なるので、家庭の数だけ味噌汁の味があるように、組織の数だけDXもあると考えれば、この言葉の定義を巡って議論してもあまり意味はなく、その本質を捉えるようにしたいものです。働き方改革とか、SDGsなども含めて、新しい概念やバズワードに振り回されないためには、組織経営の原点に立った思考をすればよいのではないかという提案です。

組織の意義

組織の存在する意義については、それが何かの目的を達成するためであり、その目的実現にあたっては一人でことをなすよりも協働するほうが単なる人数の足し算以上の力を発揮できるからである点は、論を待たないでしょう。目的とは組織によってまちまちですが、その形態を問わず共通するのは社会にとって何らかの価値を提供することです(反社勢力を除くことは言うまでもありませんが)。営利組織であれば顧客のためにどのようにしてより高い価値を提供するか、行政組織(自治体など)はよりよい住民サービスの提供、ということを考えることに他なりません。

そして価値の提供に当たって協働するには、必要な知識や資源をどう組み合わせるか、そこに投入される価値が生み出される価値よりも少なくなるように効率よく組み合わせなければならないことは、営利組織に限らず非営利組織であれ求められることです。よく、公益的なサービスは赤字になるのが当然なので税金を投入すればよいという議論がありますが、それは論理の飛躍です。憲法に定める基本的な人権の行使に当たって価値に見合ったコストを負担しきれない人がいるのでそれを国民の意思として公費(税金)で提供しているのであって、その提供側の不効率や存在を正当化するものではありません。

DXは目的ではなく目的への問いかけ

このような組織の位置づけのコンテキストの中でDXを捉えれば、特に迷うことはありません。組織の価値提供と効率的な運営と資源配分のために、利用できる情報処理能力をどのように使えばよいかを考えることです。次々にバズワードが出てくるのは、情報技術が日々進歩していて、それまでできなかったことができるようになると、それを端的に説明しようとする人たちが出てくるからで、止めることはできません。戦略情報システムが叫ばれたときはERPが登場した時期と重なりますし、ネット通販が出たときは、携帯電話の爆発的な普及と重なっています。むしろ「できなかったことが、できるようになる」ことが、組織の価値創造や効率運営にどういう意味をもたらすのか、改善する余地はないのかをいつも考えておくべきです。

これまでの経営は人や物あるいは場所(空間・重さ・距離)といった物理量の制約を受けてきました。そこに情報処理能力の向上によって、その制約を超越する能力を人間が得てしまったわけです。とはいえ、データ伝送の遅さによる制約や保管のコスト、あるいは情報処理システムの初期投資の大きさ、開発能力などの制約は依然としてありました。昨今は、クラウドサービスと高速回線やVPNが当たり前に普及したことにより、信頼性の高い情報処理システムを短期間にスケーラブルに構築できるようになりましたし、維持管理能力も自前で用意せずにサービスとして購入できます。いわば情報処理能力を誰もが組織の必要性に応じて購入できるようになったということです。

組織の意味、そして個の意味までも

その意味するところは、経営上のボトルネックが量としてのヒト・モノ・カネから、情報処理能力を経て、サービスを入手できる環境を活用する人間の能力や知恵に移ったということです。ということは、能力や知恵のある人は、組織の中であるいは組織に頼らずとも自らの工夫により手に入るサービスを組み合わせてビジネスができる環境ができつつあるということです。つまりDXは組織の人に組織の存在意義を見直すこと加え、組織でなければ取り組めないことの意味をも含めて、自らの組織における意味を考えさせているとも言えますね。

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