人工知能が会計士の仕事を奪う?

2016年11月3日 | By 縄田 直治 | Filed in: 監査と監査人.

表題とは言い方は異なりますが、「人工知能が一部の業務を代行してくれる」というのもあります。
「できるものなら少しでもいいから早く奪って現場を楽にしてくれ。」
これが私の本音ですね。

そもそも人工知能というモノにもコトにも会ったことも見たこともない私には、マイナスイオンとか納豆ダイエットと同様の都市伝説のように聞こえます。

囲碁でAlphaGOがプロ棋士に勝ったという話を聞いてマシンスペックを調べてみたら、なんと千個以上のCPUやGPUをぶんぶん回して計算しているというではないですか。実は技術者が人間棋士に勝つことの先に目指しているのは、囲碁というゲームの「必勝パターン」をアルゴリズムによって解き明かすことで、その目標到達はまだまだ先のようです。

むしろAlphaGOは人間の頭脳だけで解明できるところまではコンピュータでもできるようになったというに過ぎません。しかも、AlphaGOがなぜその手を打つのかは人間には示すことができません。そもそもの囲碁に対する考え方が異なっているようです。

翻って監査の世界。

受発注や倉庫業務、物流の自動化はかなりのレベルまで来ていますし、これに伴う会計処理まで自動化されている会社はそれなりにあります。このような環境(つまりデータをトリガとして業務がシステマティックに動く)においては情報の信頼性確保は必須でしょう。それ自体、どのように担保するのかが問われる中で、会計記録も同じ俎上に載せなければならないでしょう。

クラウド会計サービスでは、銀行取引データや証憑から機械学習を使って会計処理をする仕組みができつつあります。簡単な税務申告ならできるとすれば、近い将来には経理マンのいない会社が出てくる可能性があります。あなたが会計士だったら、そういう状態のとき、どのように監査証明しますか。

地方議会が政治資金の領収書をすべて開示するという話もありました。
「市民の皆さん、どうぞ見てください」ということです。このようなケースは正しく会計処理したかどうかよりも、お金の使途や成果のほうがより重要です。どのように監査証明しますか。

技術発展により仕組みが変われば、監査という仕事の社会的位置づけや、公認会計士という職業への期待役割が変わっていきます。短期的には機械ができるような作業は機械に任せられるような仕組みを作っていく必要があるし、長期的にはそのような社会的枠組みの中での必要な情報とは何か、また情報の信頼性を担保する仕組みをどう作っていくかが問われています。会計士がそれを提示できなければ、必要に応じて誰かがするでしょう。その時こそ、(AIでないにせよ)仕事を奪われる・・・いや、見捨てられるときでしょう。

シンギュラリティなど関係ありません。世の中に起こっている企業活動を数字で表すのが会計で、その適正性を保証するのが監査。であれば、起こっていることについていけなくなったときが、監査人の終わりです。

Print Friendly, PDF & Email

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

超難解計算問題 *