第19回日本ナレッジマネジメント学会

2016年3月19日 | By 縄田 直治 | Filed in: 組織力.

※2016年11月6日データ整理をしていて未投稿状態(あとで書き直す)であることに気づきました。

2016年3月19日
日本ナレッジマネジメント学会の第19回が開催された。
場所は、野中先生を社外取締役として招聘し知識創造への経営レベルへの対応についてはよく知られているエーザイ本社ビル。

エーザイの内藤社長の講演も聴けたことでまたイメージが膨らんだ。
総ビジネス時間の1%を投資として患者との時間共有(特に食事が有効らしい)に使うポリシーがある。
薬で治癒できる病気は1%程度しかなく、その他は苦痛を取り除いたり症状を緩和するなどの機能しかなく、患者の本当のQOLの追求のためには、患者と直接話す場を作り「感情(苦楽)を共有」することが、全社員に義務付けられている。
問題解決への強い動機が生まれないと、いい薬を作ろうというエネルギーは湧いてこないからだ。

内藤社長によればこれからのリーダに必要なのは「時期読解力」(いまここで起こっている事柄から将来の機会を見出す力)だそうだ。
イノベーションにもフェーズがあって、スクラッチから研究成果が出るまで(探索期discovery)は自主的な方法に任せるのがよい。この場合のリーダは突出型で一般には扱いにくいとされている人(徳ある人の下にいることが多い)が向いている。他方、ある程度の成果が出て商品化(開発期development)に入るまでは、コラボレーション型のチームがよくリーダもマネジメント能力が必要になってくる。

実務の観点からSECIモデルの適用で重要なのは、ナレッジのconversion pointが明確に定義されていること。

会社のゴールはhhcであるが、利益は結果である。これを定款に入れたことによって、株主を巻き込んだ。ここまで実践している会社は少ない。本来、社是とか社訓というものは定款の外にあるというのが常識のようになっていて、定款はどちらかというと法律的な堅いことが書いてるように思い込んでいるが、定款に入れるということは、株主に承諾させるとともに株主にコミットすることであり、また株主に経営者の思いを共感させるという重要なプロセスであることを改めて学んだ。

エーザイは具体的には22億錠を途上国に無償提供するのも株主にとってはコスト(30億円くらいかかる)ので、これは長期的投資(途上国でのブランドイメージの向上による市場拡大)という説明を丁寧にしている。

次が、清水博東大教授による「卵モデル」の説明。

清水教授は物質的な生命という視点ではなく、関係性としての<いのち>という考え方に立ち場の理論を説明する。
<いのち>とは「存在し続けようとする能動的な活き(はたらき)」のことで、ここでいう存在とは居場所において主体的に生きていく(未来に向かって存在しようとする)ことである。

<いのち>は場において重層的に存在し、家庭、組織、社会を形成する。あたかも、フライパンの上に卵を落とすと黄身はそれぞれ独立しているが白身は全体を包むようにある。自己の<いのち>を居場所に与贈することが、自己組織化。

持続可能性とは自我が自己に変わること。
自我とは自身と繋がりを切った生活体でお互いが生存競争の対象であるため、環境の奪い合いに至るが、自己とは、居場所に生まれる<いのち>の結節点であり、自身の媒介で多様な己が繋がることで環境を共に構成する。

興味深かったのは<いのち>と組織とを関連付けて考える「組織における認知症」理論。

認知症とは自己の存在を居場所に位置づけられなくなり自己を失っていく病気だとし、「企業認知症」が本当の市場(居場所)を見失い、自己を市場に位置付けられなくなって、未来へのシナリオが定まらず、妄想的経営が行われ、目先の方針が居場所を徘徊することとする。まさにアナロジーとしても言葉としても認知症そのものだ。

<いのち>による企業自己の統合力が失われて、直観的な創造力が消え、形式論理が人々に押し付けられて、モチベーションが下がることに原因があるという。

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