ガイアツ

2008年12月25日 | By 縄田 直治 | Filed in: 情報と伝達, 組織力.

ガイアツとは外部からの政治的圧力のことで、バブル経済華やかりし頃の日米構造協議でアメリカからの圧力が強いためそうせざるを得ないという「仕方のない論理」として使われた言葉である。

監査の過程でも、会社の方から「うちの会社は、外の人に言ってもらってガイアツをかけないと中々行動を起こさないから、ぜひ会計士さん言って下さい・・・」という話はよくある。こちらとしても監査上のリスク軽減につながることであれば、そういう話を会社の上層部にすることは吝かではなかった。

しかし内部統制監査が始まってみてみると、このような「要望」はいろいろ政治的な意味があって、場合によって会社の全社統制に問題があることをにおわせる現象の一つであると最近は思うようになっている。

担当経理マンが臆病で上司に物が言えないという程度であれば、まだ問題のレベルは低いかもしれない。

しかし、通常の当たり前のことを普通に話せないとすると、そもそも、会社内の情報の伝達経路が輻輳し、情報共有がうまく行っていないということを示唆している。本当に重要な事項が上にタイムリーに伝わらないとすれば、それは問題への対応が遅れることになり、場合によっては財務報告上の虚偽記載をもたらす事項に発展しかねない。

もう一つは、会計士のガイアツであれば話が通じるのに、社内からの声が上に届かないことそれ自体の会社の体質問題である。会社は顧客の状況を把握して市場での存在意義を常に見直していくプロセスを備えていなければならない。内部統制の究極の目的は事業の存続発展可能性を市場との対話を通じて維持していくことにあるといっても過言ではない。仮に、外部の目を「ガイアツ」によってしか意識できないのであれば、その会社は内輪の論理が優先し市場との対話を拒絶していることになり、既に崩壊への第一歩を歩んでいるのかもしれないのである。

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