統制手続のルール化

2008年3月23日 | By 縄田 直治 | Filed in: リスク対応と統制手続.

統制手続をルールにする場合には、通常は「こういうことが起こったら」「こういうことを行う場合には」という形でルール化されることが多い。これを、「イベントドリブン型」の統制手続きと仮称しよう。

さて、イベントドリブンで統制手続は完璧になるだろうか。答えは当然に否である。


イベントドリブン型の欠点は、通常、「市場の変化」というファクターを欠いている事が多い。むしろ、市場の変化はないものとの前提に立っていることが多い。

とはいえ、企業のおかれている環境は常に変化している。株価、為替、金利、法制などをウォッチしている会社はごく普通にあるが、それらを会計上の手続にどう反映するかを考えている会社は少ないだろう。

実は、この側面は、決算財務報告プロセスに織り込まれている。資産の回収可能性の評価(固定資産の減損会計、貸倒引当金、有価証券時価評価、投資の減損評価など)である。

しかしながら、残念なことにこういった手続が期末直前になって「決算の一手続」として行なわれることが多い。市場の変化を決算に反映するという意味では問題はないが、経営としてはそれでは手遅れである。経営者は、市場の変化に則してリアルタイムに状況の変化を把握する必要がある。欲を言えば、変化を想定して変化の度合に対して自社がどの程度影響を受けるかを考えておかねばならない。

実態としてはそれができていない会社は多い。そういった状況について、私は、財務報告に限らず内部統制の重大な瑕疵だと考えているが、いつも「どう決算に反映するか」に議論が矮小化されてしまい、本質的な経営態勢の問題にまで話が行き着かないのが残念でならない。経理スタッフは仕事が増えるとか、サボっていると思われるのを嫌っているのかもしれないが、本来は、経理部門がリスク管理の一環として積極的に提言すべき問題である。

それをやらずに伝票処理だけしているのであれば、経理部門など単なる事務処理部門でしかない。すなわち経営スタッフとしては無用なのである。

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