取締役による会計不正

2010年6月24日 | By 縄田 直治 | Filed in: 不正.

シニアコミュニケーションが平成22年6月4日に公表した外部調査委員会による調査報告書を読んでみた。

http://www.senior-com.co.jp/pdf/100604_release.pdf

不正に至った経緯、かかわった人物、手口、他者の巻き込み方、監査のすり抜け方など、読めば読むほど監査対応の難しさを認めざるを得なくなる。

昨今、内部統制評価制度の見直し論議が出ており、強化ではなく緩和の方に動いているように聞こえてくる。

元々、この制度は某鉄道会社が上場を維持するに必要な一般株主の数を確保するために、役員保有の株式を名義を変えて株主を増やして上場基準を維持していたという、有価証券報告書の虚偽記載に端を発している。

当時はエンロン事件の余波が至る所にあり、監査の厳格化や内部統制の充実、コーポレートガバナンスの強化と言ったお題目が人口に膾炙した時でもあった。そういった中で、内部統制評価報告制度が導入された訳だが、いつの間にか議論の焦点が「不正をどう抑えるか」ではなく「どうやって制度を満たす作業をするか」という方向になっていった。

外部調査委員会報告を読み、原点に帰って考えてみると、本来必要な議論は、「取締役レベルの不正を防ぐにはどういった方法論があるか」というところにある。

内部統制は、業務の効率と会社の社会的責任の遂行が経営者の意図したとおりに進捗しているかどうかをモニターする仕組みであり、一般には経営者が責任者としてこれに携わることになっている。しかし、本件を読めば、取締役が通謀すれば内部統制は無効であることは一目瞭然で、こうなった場合の発見や対策についてどのように手当てしているかという点が、実はもっとも重要な仕組みなのではないかとさえ思える。

よく、「内部通報制度を導入しています」という話があるが、内部通報も取締役に伝わるだけでやはり限界がある。

そうなると、経営者は自らが公明正大でいられることをどのように担保しているかということを、自ら仕組みを明らかにして、外部の評価に委ねる必要性が出てくる。これこそが経営者によるアサーションであり、外部監査などによって担保されなければならない仕組みなのではないかと考えているのだが・・・・。

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