次の文章を読んで問いに答えなさい。
連日の残業(過剰労働)で疲れているAさんは、今朝、家を出る時の些細な夫婦喧嘩が頭に残り、仕事への集中力を欠いていた。そこで不覚にも本日の伝票処理のときに、本来ならば10万円という売上金額を販売管理システム画面に入れるべきところ、100万円と入れてしまった。
(問題)上記における財務報告の虚偽記載リスクと統制目標及び統制活動(統制手段)の例を述べなさい。
(答え)
- 虚偽記載リスクは、「実際の取引金額とは異なる金額が入力される」ことを原因として「売上(売掛金)が過大」になる結果をもたらすこと。
- 統制目標は、「売上(売掛金)が取引金額にて正確に入力処理されること」
- 統制手段は、例えば、「入力されたデータが上司に回って回付された原票と突合の上で承認される」、「入力チェックリストを印刷して原票と照合する」など。
次のような間違いは、ありがちであるが、どこが誤っているのだろうか。
- リスク:疲労が原因で入力金額を誤るリスク。上司も疲労していてチェックがおろそかになるリスク。
- 統制目標:労働環境を改善する。
- 統制手段:従業員の過労防止のため、ノー残業デーを設定する。残業記録を閲覧しノー残業デーが遵守されていることを監視する。
家庭不和が業務効率に影響していないか上司は部下にときどき声をかける。
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「財務報告上の虚偽記載を許容可能なレベルまで減らすこと」が統制の目標であり、リスクはそれが達成されない「状況事象」(=虚偽表示が発生している事象。つまりあるべき財務情報と異なっている状態。)を言う。注意したいのは、把握すべきことは統制目標が達成されない状況や事象(=虚偽表示の原因)であって、その状況や事象をもたらした原因
(=虚偽表示の原因の原因)ではないという点である。
根本に遡れば、確かに不正や誤謬は(本件の場合は)連日の残業や家庭環境に遠因があるかもしれないが、「統制活動」に求めらているのはそういうことではない。経理マンの資質などは財務報告の統制目標を担保するための統制活動のレベルではなく、会社レベルのテーマとなる。強力な統制は取引や数字の実態を直接的に確認する統制であり、間接的な全社統制は予防的な意味が強い。
財務報告に係るリスクを制度趣旨から履き違えると、後の全てが変な方向に進んでしまうので、注意したい。
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