会計士制度崩壊

2010年5月2日 | By 縄田 直治 | Filed in: 監査と監査人.

些か過激なタイトルだが、あながち冗談でもない。

IFRSで会計基準が世界共通となることと併行して、ISAで監査制度が統一化(いわゆるクラリティ)が進んでいる。企業業績の測定表現方法である会計が一元化されれば、それを監査する方法も一本化されてしかるべきで、会計制度と監査制度があいまって初めて決算開示の品質が同一尺度になるということは、物の道理である。

しかし監査の方法が一元化されてくると、それを遂行する会計士の資格要件についてもだんだんと一元化されていき、国による違いがなくなっていくのではないか。たとえばCISAやCFEなどの資格は国際的に通用している。単に国家の管理を受けているかいないかに過ぎない。

そうなると、一般に難しいとされる会計士試験と他業態(税理士など)からの参入障壁によって守られている日本の会計士制度は、「市場の違い」を特に前面に出さない限りは日本独自で存在する理由は喪失する。

会計士制度崩壊のもうひとつのシナリオは、期間利益概念の喪失による会計情報の無機質化がもたらす影響である。私が会計を習った頃は、「利益とは何か」を追究するのが会計であると教わった。つまり企業の「業績」とはいったい何を意味し、それを貨幣数値でどのように表現するかということを考えるのが会計であり、職業会計人の役割であり、レーゾンデートルであったわけだ。

しかし、包括利益概念(資産の負債の変動の差額から株主との取引を控除したものという意味不明な定義)は、会計情報が単なる時価情報を寄せ集めたものに過ぎなくなるわけで、企業業績の本質や表現について議論する機会も減っていくのだろう。そうなると、「会計」を考える必要性はなくなっていく・・・・となれば、職業会計人は社会から不要になることを意味している。

さて、私はこれから何を基礎に生活していくか、考えねばならなくなっているということだ。他方、日々の仕事をこなすのに追われている身でもある。

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