RSSとXBRL

2008年1月6日 | By 縄田 直治 | Filed in: 会計とIT.

RSSとはRich Site Syndicateの略称で、インタネットのWebサービスにおける更新情報などをXMLを用いた一定のフォーマット(書式)で提供しているファイルである。通常は、このファイルに対するリンク情報がトップページのどこかに小さなアイコンなどで提供されている。

このリンクをRSSリーダと呼ばれるソフトやWEBサービス(WEBメールのような方法)に登録しておけば、RSS情報を閲覧できるため、自分の好きなサイトが更新されたかどうかをわざわざネットサーフィンして見に行かなくてよいので便利である。サイトの更新だけでなく、例えばニュースなどを提供しているサイトもある。

このRSSは単純なXMLファイルであり、そのフォーマットはRSSとATOMが一般的だが、それぞれバージョンがいくつかあるので、数種類のRSSが世の中に出回っている。実はXBRLはこのRSSの考え方と組み合わせると、企業情報開示の考え方が大きく変わる可能性がある。

XBRLのメリット

XBRLのメリットは、

  • データの利用に当たって再入力する必要がない。
  • 各社のデータが同じフォーマットで利用できるため比較形式で利用しやすい。
  • データの定義がタクソノミで決まっているため加工利用しやすい。
  • 電子データであるため、距離や時間などの物理的な制約を受けない。

というあたりにあろう。

XBRLの可能性

いまの企業情報開示は有価証券報告書などの情報をHTMLで金融庁のEDINETに登録する仕組で、監査報告書が綴じこまれた原本は会社に保管されている。XBRL形式が普及すると以下のような企業情報開示の形式が広がる可能性がある。

  • 情報利用者(つまり投資家)は、
    1. XBRL形式のデータが取扱えるソフトウェアを用意する。
    2. 企業のサイトにXBRL形式の財務データがアップされたものを、RSSと同じ様にタイムリーな情報として入手する。
    3. 同業他社比較や、過年度比較、あるいは、他のデータとあわせた独自の分析をする。
  • 情報提供者(つまり企業)は、
    1. 決算を行ないXBRL形式でデータを作成し監査証明を受ける。
    2. 監査を受けたデータを、自社のあらかじめ公表したサイトに掲示する。
    3. 決算だけでなく、定性的情報なども、XBRL形式で決められた形でサイトに掲示する。
  • 会計監査人は、
    • XBRL形式のデータを監査し、また監査されたものであることを認証する。
  • 監督機関は、
    • 会計監査人を認証する。例えば公認会計士協会。
    • 企業の開示している情報が、「開示した情報」であるという同一認証をする。例えば、いまのEDINETに替わって。

建前上はEDINETのデータが正式なファイリング情報ということになっているが、紙に印刷されたものと同じものがEDINETに登録しなければならないことになっているだけであり、財務データは厳密な意味で会計監査人の監査を受けたものではないだけでなく、紙の有価証券報告書と同じものであるという保証は誰もしていない。つまりデータの保証だけでなく認証もしなければ、開示制度としてのXBRLは機能しない。

但し、現在でも企業のサイトには財務情報などが沢山掲示されており、それらを認証しているわけではないにもかかわらず、便利に利用されている。つまり利便性だけ言えば認証制度の制定よりも先に、実態としての利用が先行する可能性がある。

普及の鍵となるもの

XBRLが広がるには、官庁が率先する必要があるという意見が多いが、私は異見を持つ。むしろ、インタネットの世界は自由に変化しつつ発展していくところに特徴があるので、官庁の介入は少ないほどよい。本当に利便性のあるものであれば、自ずと普及するはずである。むしろ官庁の役割は、その普及の妨げを取り除き、環境整備を側面支援することであろう。

1.XBRLパーサの普及

XBRLデータが、データとして完全な形であることを確保すると同時に、XBRLデータを生成するに当たってエンジンとなるソフトウェア(パーサという)が必要である。これはXBRLコンソーシアムなどから無償で提供されるべきであろう。パーサはいわば社会インフラであり、情報作成者だけでなく、情報利用者や、監査する側にも必要となるものである。

2.XBRL利用財務分析ソフトの普及

情報を利用する側が、RSSリーダのようなソフトを開発して、情報を利用できるようにしなければならない。例えば、パッケージベンダがそれを販売してもよいが、証券会社が投資顧客にサービスの一部として提供するということも考えられる。株式売買をする投資家は自分で組んだポートフォリオ情報にしたがって財務情報を入手でき、その同じ画面から売買注文が出せるなどのメリットがあろう。

3.情報提供企業側メリットの訴求

おそらく官庁が最も貢献できるのはこの分野であろう。

複雑膨大となった有価証券報告書の開示が簡単になるよう、例えば一時に全ての情報を有価証券報告書というパッケージで開示させるのではなく、発行株式情報、役員人事情報、研究開発情報、リスク情報など、それぞれの開示分野で、状況が変わるたびに部分的に適時に最新情報を登録できる仕組みの導入。また、財務諸表情報と重複する情報(例えば5年間比較情報など)は割愛できるようにする。

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