アサーションは単独で成立するか

2007年12月30日 | By 縄田 直治 | Filed in: リスクの分析と評価.

現金売上の商売(例えば、コンビニなど)では、財務報告における経営者のアサーションとしては、「全ての売上がレジで正確に記録され現金が保全される」ことにある。このアサーションを統制の有効性によって確保するに当たり、どのように統制をテストすればよいだろうか。

  • 例えば、現金実査をすると、現金がいくらあるか明確に分かる。つまり現金の実在性を立証するのに、これ以上の統制手続はないだろう。
  • 売上計算の正確性は、レジでバーコード読み取りして日締め(場合によっては時間帯で)したものと、日計表(日々の仕訳の合計表とする)とを照合することで、確保されるはずだ。
  • 売上の網羅性は商品の棚卸手続によって棚卸差異が発生しないことが一つの根拠になる。これは仕入が網羅的に計上されているという前提がつくが。
  • 売上の実在性は、日々の売上と現金の増加額とが一致することで確保される。現金商売の場合、架空売上を計上する動機は乏しいと思われるが、仮にレジで二重入力するようなことがあれば、レジの音が変わって同じ商品番号が二度処理されていることを警告してくれる。

こうしてみると、現金の実査は極めて重要なコントロールとして位置づけられることになろう。では、現金実査を行なっていれば他のコントロールは不要なのだろうか。

答えは否である。現金実査はそこにある現金残高しか保証しない。つまりあるべき現金を網羅する仕組は、あくまでも売上の網羅的計上とその一致の確認なのである。

このように統制手続はそれ単独ではなかなか十分に機能しない。内部統制のテストでは、
勘定科目のアサーションを確保することに主眼が置かれているが、本当に大事なことは、「取引」という単位で考えることである。財務報告において取引は仕訳に帰納集約され、貸借一致の原則がある限り、ある科目(例えば借方の現金)のアサーションが立証されることが、他の科目(例えば貸方の売上)のアサーションを補完していることが十分に考えられる。

財務報告の適正性は、取引単位で、各科目アサーション同士が相互補完的に成立することで、はじめて確保されるものなのだ。だからあまり科目単位で考えすぎず、一群としてどう機能するかという視点を入れたほうがよいとも言える。

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