IFRSのアドプションを目指して日本でも過年度決算の修正に関する会計基準が整備された。
企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」及び
企業会計基準適用指針第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」の公表
過去の決算を修正する理由はタイトルを見て分かるように、(1)適用会計基準の変更や表示科目の変更をしたことに伴い、開示期間分の決算の比較可能性を確保するために行うものと、(2)過去の決算に誤謬(不正によるものも含む)があった場合にそれを正すもの、とがある。
永年、日本では決算は株主総会で配当可能利益を決めるものであるとの商法の考え方が支配的であったため、過去の決算を修正するというのは畢竟、誤りを修正することのみを意味していたため、実務における遡及修正についての強い心理的抵抗がある。毎年の株主総会で決算を確定するという考え方は、会社法になって会計監査人が適正意見を提出した段階で確定することになったが、不適正意見の場合には株主総会で確定するという原則的考えは変わらない。
この会計基準には少し注意すべきところがあって、会計基準としては比較して開示されるものの比較可能性を確保するところに意義を置いているので、あくまでもひとつの開示書類における比較対象となる財務書類が遡及修正の対象となるが、開示基準側がたとえばEDINETに開示されているすべての決算に対して訂正させることとのバランスをどうとるべきなのかという点も議論されることになろう。
また、監査においても現在の考え方は、開示される決算情報にはすべて監査報告書がつけられることになるので、遡及修正には追加的監査手続が間違いなく想定されるが、比較可能性の確保のための遡及修正に対する監査手続と誤謬訂正のための監査手続と、さらに不正が発覚した際の監査手続とは、それぞれがまったく意味が異なったものになるので、今後、どのような手続が必要なのかについて明確に整備されていく必要も生じている。
特に日本の監査報告書は単年度決算に対して監査意見を付しているが、本当に比較可能性を担保するのであれば、開示される数期分の決算全体として監査がなされなければ、結果的には監査が比較可能性を担保する意味を成さないのではないかという疑問もある。
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