ハインリッヒの法則

2007年11月28日 | By 縄田 直治 | Filed in: 組織力.

メーカとか建設業とかいわゆる「現場」を持っている業種の方々には、「安全教育」などでおなじみだと思うが、「1件の重大事故の背景には、29件の中規模の事故があり、さらに300件の小さな事故がある・・・・」というような内容だった。


統計的に正しいかどうかは別として、感覚的にはなるほどと思わせる。特に「300件」はいわゆる「ヒヤリ・ハット」した経験に着目させるという点で法則の名称は知らずとも大変身近な考え方である。ただ、これを、「事故を重大なものと軽微なものとに分類して、重大な事故が起こった原因をきちんと分析し、二度と起こらないようにしましょう」というように捉えてはならない。むしろ、「重大な事故であっても素になっているのはほんの小さな原因の寄せ集めであるので、小さな事故こそ見逃してはならない」、と解釈すべきであろう。

通常、監査においては、「重要なエラー」に着目して意見形成する。監査は結果しか扱わないからそうなるのは当然。しかし被監査会社の要望は、「ちょっとしたことでも指摘してほしい」というところにある。つまり問題が大きくなってから騒ぐのではなく、小さいうちに叩き潰しておきたいという気持ちは、特に管理者レベルであれば当然のことだろう。この両者の「当然」は全く正反対であるところが、曲者だ。監査の期待ギャップが端的に現れる部分だといっても過言ではない。

困ったことに、「細かなことでも何でも指摘してほしい」という会社の要望は、本音であるときと社交辞令であるときと両極端である。本音の会社は、ちょっとしたことを話しても、その場で「具体的に何をどのように解決すべきか」というところまで話が進むことが多い。しかし、社交辞令の会社は、「そういった問題はレポートで指摘してください」とか「重要性がないから指摘から外してください」と言われることも多い。つまり、組織の姿勢が、個人の態度に露骨に現れてくるのである。

当事者の態度はその会社では当然だと思われている。こういうところに企業文化が垣間見られるのではないか。

ハインリッヒの法則の「オチ」はおそらくマーフィの法則なのだろう。
「失敗する可能性のあるものは、必ず失敗する」

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