連結納税に加入した場合の時価評価差額に係る税効果

2007年10月20日 | By 縄田 直治 | Filed in: 制度会計.

親会社が連結納税を開始した100%子会社や、株式の完全取得で買収された会社が連結納税に入る場合、既存資産の時価評価が求められ、含み益がある場合には一時に課税所得が発生する。有価証券の含み益などが大きい場合には、税引前利益に対する法人税等発生額の割合はかなり大きくなるため、税効果の適用が検討されることになる。

政策的に保有している投資有価証券の場合、通常は売却を前提としていないため、スケジューリングの可能性が主張できないことから、課税された含み益は将来減算一時差異であってもスケジューリング不能差異となる可能性がある。他方、会計上は有価証券評価差額が発生するので、通常ならこれに対する繰延税金負債の認識が必要となるが、既に課税されているので負債の認識は不要となる。

これを文字通り適用すると、以下のような状態が想定される。

<前提条件>

税引前損益:安定的に100発生している。

投資有価証券の取得価額:100

投資有価証券の時価:150(含み益50)

法定実効税率:40%

1.税効果を考慮しない場合

  連結納税前 連結納税加入時 売却時
課税所得 100 150 100
税引前利益 100 100 150
法人税等発生額 40 60 40
法人税等調整額
税引後利益 60 40 110
税負担率 40% 60% 26%
       
投資有価証券 150 150
評価差額 30 50
税金資産
税金負債 20

 

2.税効果を考慮する場合

  連結納税前 連結納税加入時 売却時
課税所得 100 150 100
税引前利益 100 100 150
法人税等発生額 40 60 40
法人税等調整額 -20 20
税引後利益 60 60 90
税負担率 40% 40% 40%
       
投資有価証券 150 150
評価差額 30 30
税金資産 20
税金負債 20 20

さて、以下の観点で、どちらの処理がより合理的だろうか。

(1)税負担率の平準化

(2)貸借対照表の純資産への影響

私見では2である。

税金負債が実質的に評価引当額の役割を果たしている。時価が下落した場合には、税金資産計上額を税金負債が下回ることになるから、この部分に対する回収可能性が問題になるが、これは、通常の将来減算一時差異の解消可能性と同様に考えれることになるのではないか。

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