補完統制が機能している

2009年6月27日 | By 縄田 直治 | Filed in: 内部統制報告書.

株式会社ニッカトー(E01188)の内部統制報告書(平成21年3月期)では、期中に新たに連結子会社が増えたがこれを十分に評価することが出来ず、補完統制が機能していることを以て、全体として内部統制が有効であると評価している事例だ。

上記の評価の結果、当事業年度末日時点において、関東電子計測株式会社について、当期平成20年10月27日に株式の譲渡契約を交わし連結子会社となったものであり、体制面、時間的な面からやむを得ない事情により、財務報告に係る内部統制の一部の範囲について十分な評価手続が実施できなかった場合に該当いたしますが、これらに関しては、一定の補完統制や手続が働いており、重要な欠陥には該当しないものと判断いたしました。したがって、財務報告の信頼性に及ぼす影響はなく、当社の財務報告に係る内部統制は有効であると判断いたしました。

補完統制や手続が機能していると判断している以上、必要な評価手続は実施できている(もちろん、合理的な基礎を得ていればという条件付になるが)と考えてもよいのではないだろうか。会計監査人の立場であれば、手続範囲の制約があったと言う場合には、通常はその部分に関しての合理的基礎を得ていないため、意見の範囲から除外するという意味で用いられるが、本件は経営者評価であって補完統制で評価したというケースであり、これを以て十分な評価手続が実施できなかったということになるのだろうか。
評価を効率的に進めていく観点からは、注目したい事例となるだろう。
もう一つの観点としては、期中に評価範囲の大幅変更(特に拡大)を余儀なくされたときに、どの程度までが評価範囲制約の「やむを得ない事由」として許容できるのだろうか。これは会社の規模やプロセスの複雑さ、影響度などによって、個々に事情が異なるので、一律に規準を定めることは難しいと考えられることから、むしろ評価する経営者がきちんとその辺を納得いくように内部統制報告書で説明することが、制度的に担保される必要はないだろうか。

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