複式簿記を習うときに初めて知る用語が、借方と貸方。どうして分かりやすく「左」「右」と言わないのだろうと思ったものだ。
これには由緒正しい理由があった。
大福帳が常識の日本に、文明開化とともに複式簿記が紹介された。「帳合之法」を著したのはあの福澤諭吉であり、たぶん借方・貸方も福澤先生の翻訳によるものだろう。
英語ではdebtor(=債務者)、creditor(=債権者)で、実務では、DR/CRと略記することが多い。借方・貸方の意味は「借りた人」「貸した人」であり、債務者、債権者と意味は同じである。
貸借対照表を見れば、左側(つまり借方)に売掛金や貸付金といった債権が計上され、右側(つまり貸方)に買掛金や借入金といった債務が計上される。
これを分かりやすく表現し、貸付金は「山田さんに貸した金」、借入金は「鈴木さんから借りた金」と考えれば、貸借対照表は以下のようになる。
(借方) | 資産 | (貸方) | 負債 |
現金 | 買掛金 | ||
売掛金 | ・・・ | ||
貸付金 | 借入金 | ||
-山田さん | 10 | -鈴木さん | 50 |
つまり、山田さんは債務者であり、鈴木さんは債権者なのだ。
左側・右側という定義は少なくとも紙に記載される位置関係によって、数字の意味が変わってしまう。それを借方・貸方と表現することで、紙の上の位置関係から中立した形で扱えるようにしてくれたことは、ITで簿記処理をするようになった今、重要な意味を持っている。
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