資本的支出と収益的支出

2007年5月19日 | By 縄田 直治 | Filed in: 監査会計用語.

会計を勉強してしばらくすると、教科書で資本的支出と収益的支出という用語に必ず出くわす。

例えば用語の意味を次のように習う。

「購入した設備にガタが来てその修繕など行なったときに、設備の能力を増強させるような支出を資本的支出といい、その支出は固定資産の簿価に加算される。一方、単に元の生産能力を維持するためだけの支出は収益的支出といい費用処理される。」

初めてこの用語を聞くと、資本的支出は資産的支出、収益的支出は費用的支出と称するべきではないかと思うが、よくよく考えるとそれは違う。

会計は、もともとイタリアの貿易取引を記帳する技術として発展したと言われている。

貿易商が、航海の都度、出資を募り船が無事戻ってきたら出資と得られた譲与財産を分配していたので、会計は一航海ごとに財産評価して分配可能額を計算していた。これに対し、出資者が共同で貿易会社を作って船を買い、それを元手に貿易をすれば、航海が続けられる限り会社は存続するから、適当な期間(例えば半年ごと=会計期間)を定めて財産目録を作り分配可能額を計算するようになった。

その際、船は分配できない(貿易ができなくなる)ので船の購入に対する支出は出資者から見れば資本財を構成する支出(=資本的支出)となる。一方、貿易に必要な物資を購入するための支出や船の維持管理に必要な支出は出資者から見れば後日の分配を得るための支出(=収益的支出)となる。

すなわち、資本的、収益的とは、支出の会計処理に着目した言葉ではなく、支出の目的に着目した言葉なのである。ちなみに、船(すなわち資本財)の購入も収益分配を得るためではないかと考えるかもしれない。しかし、そうではなく、船を分配すると貿易ができなくなるので、船は定期分配の対象ではないのである。つまり船を分配するときは貿易事業を止めるときで、その場合には船を売却して得た金銭を分配することになる。つまり収益的支出からの分配は、継続的に事業を行なう場合の成果配分だが、資本的支出からの分配は事業の清算分配であるとも言える。

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