四半期報告

2008年11月8日 | By 縄田 直治 | Filed in: 制度会計.

今年度から上場会社に対する四半期報告制度が金融商品取引法で義務付けられた。

第一四半期では問題にならないが、第2四半期と第3四半期で問題になる独特の事項として、四半期会計期間の開示科目がある。

四半期報告では、各四半期(当該3ヶ月間)だけを示す「会計期間」と、期首から当該四半期までを含む「累計期間」との二つの損益計算書があり、第2四半期以降は会計期間情報と累計期間情報とを開示することになっている。通常は、第1四半期会計期間PL+第2四半期会計期間PL=第2四半期累計期間PLとなるはずだが、実務上は次のような問題が発生している。

  1. 1Qで不良債権が発生して貸倒引当金を繰入し、第2四半期でその貸倒れた場合、1Qでは「貸倒引当金繰入額」、2Q累計では「貸倒損失」の科目を用いるが、2Q会計期間でどう処理するか
  2. 前期末の貸倒引当金を1Qで戻入した場合で、洗替で繰入が戻入を下回った場合(3月決算で期末付近に売上が偏在する場合によくある。)に、1Qでは特別利益に「貸倒引当金戻入額」が計上される。2Q累計期間で繰入額が戻入額を上回った場合に、販売費及び一般管理費で貸倒引当金繰入額が計上されるが、2Q会計期間でどう処理するか。
  3. 在外子会社の損益計算書を連結で取り込む場合に、期中平均レートを各四半期会計期間ごとではなく、累計期間で換算して取り込む場合に、1Q会計期間に当初適用したレートと2Q累計期間に適用したレートの違いをどう処理するか。

キャッシュ・フロー計算書は累計期間のみの開示であるが、冒頭の説明部分は会計期間におけるキャッシュフローの状況を説明することになっており、説明と数字とが対応しないという不便さがある点、改善が必要だろう。

この問題は技術論としては解決しない。元来の会計制度は年度決算を前提に作られており、四半期固有の事情について四半期会計基準で定めるという建前がある。そもそも四半期報告は何のためにあるのか原点から考えて各社が決める必要があるのだが、規制当局にも四半期報告でさほどの細かい科目の開示が必要なのかどうかというあたりから考えて欲しい。当初の四半期制度の棚卸資産の開示科目が年度のそれよりも詳細になっていたことなど、象徴的だと思えるが、正確性よりも迅速性を重視する四半期制度であるから、制度そのものも簡略化できるところは簡略化して、実務で余計なことを考えなくてよいような形に変化して行って欲しいものである。

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